<タックスニュース>

マルサの告発率が7割に急伸  100パーセントが有罪

 脱税のうちでも特に悪質なものを対象とする「査察調査」について、国税庁が6月15日に発表した2016年度のデータによると、16年度の脱税額は総額で161億円、告発分は127億円だった。着手件数では前年を下回ったものの、マルサの”成果”となる告発件数、告発率では直近3年間でも飛び抜けた数字となった。
 告発した事案1件当たりの脱税額は9600万円。脱税によって得られた資金は、現金、預貯金、有価証券、FX取引の証拠金として溜め込まれていた例が多かったが、なかには競走馬の購入資金や愛人への”お手当”に使われていたケースもあったという。
 16年度中に一審判決が下された査察事案は100件あり、その全てが有罪判決を受けた。さらに14人が実刑判決を受け、他の犯罪と併合された結果14年の懲役を受けた者もいた。
 特徴的な事例として紹介されているのは、消費税の免税取引を利用した高級時計輸出会社の脱税スキームだ。この会社は在庫を抱える高級腕時計をグループ会社間で還流させ、そのなかに国外にある企業を混ぜることで、消費税の免税取引による不正還付を受けていた。この事案について国税庁は、削除されたパソコンのデータを削除履歴などから逆にたどって完全復元する「デジタルフォレンジックツール」を利用して不正取引の全容を解明したと胸を張っている。
 また近年国税が特に力を入れている国外財産の捕捉事例としては、国外に設立した企業に架空の手数料名義で所得を逃し、国外預金や不動産に留保していた事案が紹介されている。この事例では、租税条約に基づく外国税務当局との情報交換制度が解明に役立ったとされている。「パナマ文書」などをきっかけに、各国間の税務当局ネットワークを密にする取り組みは急速に進んでいることから、租税条約を活用した国際事案の発覚は今後増えていくことが予想される。その他、近年の経済状況を反映した事案として、太陽光発電事業を使った脱税や、がれき処理など震災復興を隠れみのにした脱税事案などが挙げられた。
 マルサに告発された件数を業種別に見ると、「建設業」の30件が最も多かった。建設業は2年連続のトップとなり、告発件数は前年の15件から倍増した。2020年のオリンピック需要を背景とした建設業界の好況が、告発件数が2倍に急増した背景にありそうだ。また首都圏を中心とした地価の高騰もあり、不動産業が10件と続いた。逆に、告発の多い業種として毎年常連の「クラブ、バー」は上位5業種に入らなかった。
 これまで国税庁は、個別の脱税事件については守秘義務の観点から情報を公開せず、年一度の概要公表の際に、とりわけ特徴的な事例について手口などを公表するにとどめていた。しかし、脱税の予防や査察の取り組みについて周知することなどを目的として、今後は全ての査察事案について、脱税をした法人や個人の名前、脱税額、手口などを公表していく方針に改めるという。

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<タックスワンポイント>

株主優待は配当所得でなく雑所得に  20万円超で確定申告が必要

 株式を購入する際の大きな選択肢のひとつに「株主優待」の優劣がある。食事券や自社製品の詰め合わせなど、対象銘柄の特徴が満喫できる優待品もあれば、自由度の高いクオカードなどの金券が提供される場合もある。株主優待を廃止したため「優待目当ての株主」が売りに走り、株価が下がった銘柄もあるほどだ。
 一方で、業績悪化により配当が出せないからこそ、株主優待に力を入れることで個人投資家の「株式離れ」を防止する企業もあり、株主優待に対するスタンスは企業によってさまざまである。
 株主優待により提供される物のなかには、ホテルの宿泊券など、それなりに高価なものも少なくない。となると、株主優待により個人投資家が得た経済的利益は税務上どのように取り扱うべきなのだろうか。
 所得税基本通達24−2により「法人が株主等に対して供与した交通機関の優待乗車券、映画、演劇等の優待入場券、ホテル、旅館等の優待施設利用券、株主に対する値引き販売等は、法人が余剰金または利益の処分として取り扱わない限り、配当には含まれない」とされている。つまり雑所得として取り扱われることになるため、給与所得や退職所得以外の各所得との合計額が20万円を超えなければ確定申告は不要で、税金はかからないということだ。

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