Vol.0420
<タックスニュース>
トランプ氏の税制改革案 法人税率20%に引き下げ
トランプ米大統領は9月27日、米国の法人税率を現行の35%から20%まで引き下げる税制改革案を明らかにした。インディアナ州で行われた演説で発表し、「歴史的な減税だ」と胸を張った。そのほか、相続税の廃止や所得税の最高税率の引き下げなど多くの減税案を盛り込んだが、代替財源が見つかっていないこともあり議会の反発は根強く、実現に向けた見通しは不透明だ。
トランプ氏は大統領選挙時から大幅な法人減税を公約として掲げ、9月に入っても「ほとんどの国より低い15%までは引き下げたい」と強気の姿勢を崩していなかった。しかし腹心であるムニューシン米財務長官が、直後に「出来る限り低くはしたいが15%まで引き下げるかは分からない」と打ち消した上で、「実際には20%台前半が達成可能な目標だ」としていた。議会からも強い反発があり、最終的にはトランプ氏が妥協するかたちで20%に落ち着いた。
もっとも20%への減税であっても、代替財源が見つかっていないことに変わりはない。トランプ氏は演説で「20%よりも減税幅が少なくなることはない」と強調したが、議会の強い抵抗は必至で、法成立への道は見通せない。
もう一つ議論を呼びそうなのが、相続税の廃止をはじめとする富裕層優遇だ。米相続税は2010年に一度廃止され、その後オバマ前大統領のもとで復活して現在に至るが、トランプ氏の税制改革案では再び相続税の全面廃止を掲げた。さらに個人所得税についても税区分を簡素化した上で最高税率を39・6%から35%へと引き下げることを打ち出した。野党・民主党から「富裕層への大盤振る舞いだ」(ペロシ下院院内総務)との批判を浴びているほか、トランプ氏の主要支持基盤である労働者層の反発を招く可能性も高く、難しい舵取りが求められそうだ。
米国が20%への大型減税を掲げたことで、日本国内でもさらなる法人減税を求める声が強まる可能性がある。とはいえ二度にわたって行われた法人減税による経済回復効果は限定的で、政府の求める賃上げや設備投資拡大にはつながっていないことから、これ以上の減税には反対する声が大きそうだ。
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<タックスワンポイント>
パワハラ解決金の税務上の扱いが微妙なとき 退職金との相殺は労基法ではNG
労務上のトラブルはこじれてくると、解決金に対する税務上の扱いも判断が難しくなる。
ある会社で、管理職のNさんがパワハラ問題で従業員から訴えられた。会社は解決を図るべく協議を続けた結果、和解が成立。その条件は、被害者である従業員に解決金を支払うことだ。しかしNさんは、解決金の負担について一度は了承したものの、パワハラの事実関係については納得できない点があるとして、解決金の支払いを改めて拒否。そのため会社が負担することになった。すると、会社側の損金算入およびNさんに対する経済的利益の供与の問題が出てくる。一方、Nさんは依願退職を申し出ているので、会社は退職金の一部を天引きする形で解決金を負担させようと考えた。だが、税務上に問題があるかもしれないと、会社は税理士に相談。
税理士の答えは、次のようなものだった。会社(法人)自らが負担すべき解決金には損金算入が認められる。しかし、他者が負担すべき解決金を会社が負担すれば「立替え」となり、直ちに損金算入することは認められない。それゆえ、立て替えた解決金の支払いを、本来負担すべきNさんに請求するのが本筋。だが、会社がそれを断念すれば、解決金は、その負担を免れたNさんに対する「給与」として取り扱われることになる。退職金責務で解決金の立替えを相殺することは、会計上および税務上は問題ない。ただし、労働基準法においては、従業員の責務と賃金とを相殺、控除することは原則として認められていない。物事は、なかなかスッキリいかないものだ。
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