Vol.0465
<タックスニュース>
利益剰余金 過去最高の446兆円 内部留保課税に現実味
財務省が「内部留保課税」の実現に向けて動き出す。9月3日に発表した2017年度の法人企業統計で、金融・保険業を除く企業の内部留保にあたる利益剰余金が446兆円に上っていることが判明。6年連続の増加で過去最高を更新し、前年度比で9・9%増という伸び率はこの6年で最も高いものだった。麻生太郎財務相は、翌4日の記者会見で「あれだけ貯めて何をするのか。給料が伸びたといっても2ケタに達していないし、労働分配率も下がっている」といら立ちを隠さなかった。
安倍晋三首相は、事あるたびに賃上げや設備投資を企業トップに要求している。その効果か、法人企業統計でも、人件費は前年度より2・3%増えて206兆円、設備投資も5・8%増の45兆円となったが、当期純利益も61兆円と24%も増えた結果、利益余剰金が拡大した。一方で、企業が支払った税金にあたる租税公課は11兆円から10兆円に減った。安倍首相肝いりの法人税引き下げが、図らずも内部留保を積み増した形だ。
内部留保は法人税を支払った後の剰余金のため、財務省は「二重課税」の批判を嫌い、課税に慎重な姿勢だった。しかし昨年9月、小池百合子東京都知事が立ち上げた希望の党の政策公約では、消費税を延期した場合の財源として内部留保300兆円に課税する案が盛り込まれた。麻生氏は「二重課税だ」と攻撃してみせたが、実態は「民進党から合流した玉木雄一郎衆院議員(現国民民主党代表)ら旧大蔵省OBメンバーを通じ、財務省が上げた観測気球だった」(自民党幹部)という。財務省幹部は「内部留保がさらに拡大していく見通しである今こそ、堂々と課税を議論して実現させたい」と語る。
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<タックスワンポイント>
年をまたぐと相続税が数千万円増!? 地価変動を見越した土地対策を
ひとり暮らしの高齢女性が、元日に浴槽で亡くなっているのが様子を見に来た家族によって発見された。検視の結果、死亡推定時刻は大晦日の午後10時だったという。この女性は1000坪以上の自宅や農地を所有する不動産オーナーで、遺産の大半も不動産だった。
土地の相続財産としての価値は、国税庁が毎年7月に発表する「相続税路線価」によって算定される。路線価は毎年1月1日時点での一定の範囲内の道路(路線)に面した土地を評価するものなので、つまり土地の相続税評価額は、「死亡した年の元日の値段」によって決められるわけだ。
女性は大晦日、つまり12月31日の午後10時に死亡したと推定された。そうなると評価額は約12カ月前、”旧年”の1月1日の値段となり、約3億400万円となった。税務署はその評価に基づき課税をしたが、猛反発したのが故人を発見した家族たちだ。というのも、一夜明けた1月1日、つまり”新年”の同じ土地の路線価は大きく下がり、相続税評価額は2億2600万円だったからだ。その差はなんと7800万円に上る。
故人が旧年中に死亡したという確証もないのに、税負担に大きな差が出るという処分に遺族らは不服を申し立てた。検視の医師は産婦人科医で法医学の知識に乏しく、また故人は「紅白歌合戦」を見た後に除夜の鐘を聞いてから入浴する習慣があったため、浴槽で亡くなっていたなら年が明けていたはずとの推測を元に、結局争いは法廷までもつれ込んだ。
このケースは地価下落の時代だったため、年が明ければ税負担が下がるというパターンだったが、今の日本は地下上昇の時代だ。特に都市部では前年に比べて地下が2~3割上がる地点も多く、ただ年をまたいだというだけで、同じ土地でも相続税が数千万円増える可能性もゼロではない。もし値上がりが見込まれる都市部に土地を持っているなら”もしも”の事態が起きる前に、何らかの相続税対策を講じておきたい。
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