Vol.0036号
<タックスニュース>
「会計基準」改定で国債が売れない!?
国際会計基準の見直し議論が、日本の国債消化に悪影響を与える懸念が強まり、財務省が対応に追われている。昨年11月にワシントンで開かれたG20金融サミットは、金融危機の再発防止策として、金融機関の会計基準の見直しを指示。国際会計基準委員会(本部・ロンドン)が年内の改定を目指して作業を進めている。焦点に浮上したのが金融商品の価値評価だ。
銀行などは余剰資金の運用先として国債や株式など大量の金融商品を保有している。こうした金融商品の時価は相場で大きく変動するが、これまでの会計ルールでは、銀行の判断で、�取得価格(簿価)で評価してよいが満期まで売買できないもの�相場の状況をみて自由に売買できるが時価で評価しなければいけないもの�その他——の3区分に分けていた。
銀行にとってメリットが大きかったのが�。これは、自由に売買もでき、時価が簿価の半額以下に値下がりしない限りは時価評価もしなくていいという、�と�のいいとこ取りをしたかたちだった。日本のメガバンクは預金の集まり過ぎと貸出先不足で、1行当たり20兆〜30兆円規模の余剰資金を抱えており、大半を機動的に売買できる国債で運用している。
しかし今回の見直し案では、�の区分が廃止される見通しで、そうなると銀行は国債の時価変動を損益に計上しなければならなくなる。国債は株と違い大きな価格変動はないが、それでも銀行は保有額が大きいだけに1%の変動でも数千億円単位で損益が振れ、国債保有のインセンティブがなくなる懸念がある。
銀行は国債残高(約770兆円)の3分の1強を保有する最大の買い手だけに、影響は小さくない。
<タックスワンポイント>
異常気象相次ぐ 簡易課税制度の緊急措置も
7月以降、気象災害が猛威を振るっている。企業が保有する建物や機械、商品などのたな卸資産が被災した場合の評価損は、その年の所得計算上、損金に算入できる。ただし、災害に遭わなかった場合の時価との差額が上限となる。
また、建物や機械などについて、被災前の原状回復に要した費用は修繕費として損金処理できる。加えて、被災前の効用を維持するために行う補強工事や、土砂崩れなどの防止費用も修繕費とできるが、被災資産の復旧に代えて新たに資産を購入したり、貯水池など特別な施設を設置したりした場合は資本的支出となる。
大きな災害の場合、被災により申告や納税ができないケースも想定されるが、所管の税務署長へ届出を行うことで申告期限の延長や、納税猶予を受けられる制度がある。また、被災により会社の事務処理能力が低下した、緊急に設備投資が必要となったなどの場合には、「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を提出することで、消費税の簡易課税制度の適用、不適用を変更できる。