Vol.0038号
<タックスニュース>
自民・民主「天下り廃止」公約 キャリア官僚も戦々恐々
8月18日公示の衆院選で、自民、民主両党がそろって政権公約での天下り廃止を打ち出したことで、霞が関の中央省庁の官僚に動揺が広がっている。官僚の間では「公務員の給与水準は民間一流企業の役員に比べて低く、天下りは必要悪」「優秀な人材が確保できなくなる」など抵抗する声が強い。
民主党が天下りの廃止を打ち出したのは、「官僚が出身省庁と関係が深い独立行政法人や特殊法人に天下ることが、補助金など税金の無駄遣いにつながっている」との問題意識があるからだ。民主党はこうした補助金の改革で6兆円の財源を捻出するとしており、天下り見直しはいわば表裏一体だ。民主党の攻勢に押されて、官僚と二人三脚で政治を進めてきた自民党も天下り廃止を打ち出した。
キャリア官僚は40代後半から、次官や局長などに昇任する場合を除き早期退職する。指揮命令系統が通ったピラミッド型組織をつくるための「明治以来の伝統」(財務省幹部)だ。こうした早期退職者を処遇するのが天下りだった。
自民、民主両党とも天下り廃止の代償として「定年まで働けるキャリア制度づくり」を掲げるが、役所内では「机上の空論。次官の同期が何人もいる役所で組織としての統制がとれるのか」との声がもっぱら。霞が関の士気は低下するばかりだ。
<タックスワンポイント>
増える”ご当地”再生ファンド??債務免除特例も後押し
「中小企業再生ファンド」の設立件数が増えている。景気が上昇した平成19、20年度には年間設立件数が1件だったが、悪化に転じた同21年度には8月現在ですでに3件の設立となった。同ファンドは、過剰債務でも本業に収益力があり再生が可能な中小企業に対して投資を行う。運営は民間の投資会社や地銀など。ファンドの半分を上限に中小企業基盤整備機構が出資。多くのファンドは、投資対象がファンドのある都道府県内に限定されており、「ご当地再生ファンド」ともいわれる。
再建支援には、中小企業再生支援協議会が当たる。同協議会支援のもと、金融機関が債権免除を行う場合、税務署が免除の妥当性を認めれば「企業再生税制」の適用が受けられる。これにより、再建企業は債務免除益の範囲内で過去の欠損金および資産評価損を損金参入でき、また免除した金融機関は債権放棄による損失分を損金参入できる。
「強引な再建策を講じるような再生ファンドは審査で通さない」(同機構)ため、中長期的な視点に立った再建ができるのが強み。今後は、「設置はあくまで金融機関の自発によるが、現在ファンドのない都道府県への設置を目指す」(同機構)としている。