<タックスニュース>

「納番制度の創設」大綱に明言  年金、住民票など既存ナンバー活用も

 政府税制調査会は近く、専門のプロジェクトチーム(PT)を設置し、納税者(社会保障)番号制度の導入に向けた具体的な検討に入る。鳩山政権が目指す税と年金、保険料の一体徴収、給付付き税額控除の実施といった税体系の抜本改革を進めるには、国民一人ひとりに個別の番号を割り振り、所得の状況を正確に把握するシステムの構築が不可欠だからだ。
 現在は所得税の徴収業務は国税庁、社会保障は厚生労働省や地方自治体、年金は日本年金機構(旧社会保険庁)と所管が分かれ、個人が税金や保険料をいくら支払い、給与所得や年金給付などどの程度の収入を得ているのか全体像を把握できなかった。
 こうした情報を一カ所に集約するには、個人が確実に特定できる新たな仕組みが必要になる。これが納税者番号制度で、2010年度税制改正大綱には、基礎年金番号や住民票コードなど既存の番号の活用も視野に実現の可能性を探る方針が盛り込まれた。
 納税者番号の導入は自民党政権時代にも何度か浮上したものの、そのたびに国民の強い反発を招き、つぶされてきた。峰崎直樹副財務相は、1年以内にPTとしての結論を得る考えだが、世論の理解をいかに得るか難しい宿題を抱えている。

<タックスワンポイント>

審判所 子会社増資で注目裁決  「株価の回復可能性」どう見る??

 業績が悪化した子会社に増資し、その直後の決算で同子会社株式の評価損を損金計上したケースについて、国税不服審判所は、損金計上を認めないとする裁決を下したことが分かった。争点となったのは、「株価の回復可能性が見込まれるかどうか」である。請求人A氏は、資産状態が悪化した外国子会社の株式について評価替えを行い、期末となる平成18年3月31日付で評価損を損金計上した。
 ところが、税務当局は「株価の回復可能性がないとは言えない」として法人税の更正処分を実施。これを不服としたA氏は「増資には業績回復に直結する経済効果はない」として審査請求を行った。
 同年1月に実施された同社の株主総会では、A氏が同年2月に200万ドル、翌事業年度となる同年7月に1千万ドルを出資することを可決しており、審判所は「すでに実行することが決定している事業計画がある場合、それらも考慮したうえで回復可能性を判断すべき」とし、「同社株式価額には回復可能性がないとは言えない」とした。
 また、「増資払い込み後相当期間を経過してなお業績が回復せず、むしろ悪化している場合にのみ評価損を計上する余地がある」ことを明らかにした法人税基本通達9-1-12に照らし合わせ、同年2月の増資払い込みから期末までに1カ月程度しか経過していない今回のケースでは、「事業年度終了時点で、増資による業績回復効果がないと判明したとは言えない」として評価損の計上を認めず、審査請求を棄却した。

税理士法人早川・平会計