<タックスニュース>

中国より信頼薄い「日本国債」  返済力乏しく市場に警戒感

 日本国債をめぐる市場の動向に対し、財務省内に危機感が強まっている。債務不履行の危険度を示す指標となるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは、昨秋以降、上昇基調に入り、1月に中国を初めて上回った。省内では「明確な財政健全化の道筋を示さないと、今度こそ長期金利急騰などの事態が生じかねない」(幹部)と懸念が広がっている。
 財政が悪化しているにもかかわらず、長期金利が低水準にとどまっている背景には、日本の家計金融資産が約1400兆円あり、「いざとなれば増税すればいい」(与党関係者)との楽観論があるためだ。円高・株安で、銀行の投資先が消去法的に国債に流れ込んでいることも、長期金利の抑制要因になっている。
 だが、個人金融資産から負債を除いた純資産額は約1千兆円強で、公的債務残高にかなり接近しつつあるのが実態。財務省幹部は「返済余力が乏しくなりつつあることへの市場の警戒感は高まっている」と警鐘を鳴らす。日本より債務残高のGDP比が少ないギリシャでは財政不安が生じ、長期金利が急騰する混乱が生じている。日本は2011年度予算もマニフェスト関連の歳出拡大が見込まれており、「6月に中期の財政再建策を示す」とする菅直人財務相の手腕が問われそうだ。

<タックスワンポイント>

トヨタ・プリウス問題  注目集まるリコール税務

 ハイブリッドカー「プリウス」のリコール問題。製造業を中心としてリコール費用の税務に注目が集まっている。リコールが発生した場合、商品の回収や修理などさまざまな費用がかかる。これらは「リコール」という臨時的な事象により発生する費用であるため、金額が大規模なものであれば、営業外損失や特別損失として処理する。費用は税法上の損金の額に算入するが、リコール費用が少額であれば、販売費に含めて処理するのが一般的だ。
 また、食品の場合、「消費者が食中毒になった」「商品に異物が混入していた」などの場合にリコールすることになる。食品リコールの場合、その性質上、商品を修理・改善することはできないため、対象商品と同日、同工場で生産された商品を、在庫も含めてすべて廃棄処分とするケースが多くみられる。
 商品を廃棄処分する場合には、商品廃棄損を計上し、その金額を損金算入することが可能だ。また、商品を回収し、購入代金の返還を行う場合には、通常の返品があったときと同じく、「売上戻り」として処理する。
 ところで、今回のリコール問題に対しトヨタは、「製品保証引当金」を取り崩して対応するようだ。
 製品保証引当金とは、当期の売り上げに起因し、製品販売後の無償保証契約などによって発生する回収・修理費用に対する引当金のこと。会計上では費用として認められている一方で、税法上の損金として取り扱うことはできない。「実際に支出していない金額を税務上の費用として認めるわけにはいかない」(当局)。

税理士法人早川・平会計