Vol.0065号
<タックスニュース>
所得税増税いよいよ現実味 税調・専門家委員会がスタート
政府税制調査会は2月24日、学識経験者を含めた専門家委員会(神野直彦委員長)をスタートさせた。最大の焦点は、所得税の見直し論議。累進制が大幅に緩和された1980年代以降の税制を検証し、2010年度税制改正大綱で掲げた所得再分配機能の回復につなげる構えだ。
所得税は、1980年代後半から直接税と間接税の比率を変える目的で見直された。70%だった最高税率を1987年に60%、1989年には50%に引き下げる一方、消費税(税率3%)を導入した。1995年には中堅所得者層の負担軽減のため2千万円以上だった最高税率の適用対象を、3千万円以上に引き上げる減税を実施。
経済情勢が悪化した1999年には、景気対策のため最高税率が37%まで引き下げられ、2007年には40%に戻された。1986年度に税収の約4割を占めていた所得税は、2010年度予算(税収37・3兆円)では3割にとどまる。神野委員長は「税収の調達能力が減少しているのは明らか。効いているのは控除か税率か、課税の在り方の変化か。原因を探るのがひとつの大きな課題」と話す。最高税率の引き上げなど、増税論議は避けられない。
最高税率の引き下げは、消費税導入とセットで行われた経緯があり、景気回復が順調に進まない中での見直しは反発を招く可能性もある。これまでの税調と異なり、専門家委員会は非公開で行われる。「公開すると、その都度すぐに(マスコミなどで)反応が起き、自由な討論ができない」(神野委員長)との理由からで、増税論議を慎重にしたい政府側の思惑が透けて見える。
<タックスワンポイント>
分社節税が花盛り??3月決算にまだ間に合う!?
中小企業を対象とした優遇措置が充実してきたことで、一部の黒字会社には「分社節税」を図る動きも出ている。分社化の節税メリットは、なんといっても中小企業の軽減税率が有効利用できること。中小企業は800万円以下の所得金額に18%の軽減税率が適用される。これを利用して所得金額が800万円を上回るような会社が分社化すれば、法人税の節税が図れる。
しかしデメリットもある。分社化した場合には単体課税制度と連結納税制度を選ぶ必要があるが、単体課税を選んだ場合に会社間での損益通算ができなくなる。一方、連結納税では損益通算は可能だが、今度は軽減税率の適用メリットがなくなる。
会社を分社化する際には、債権者に対して分社に異議がないか確認する期間が1カ月以上必要だが、条件さえそろえば確認不要。3月決算に間に合う可能性もある。分社・合併ともに実務上は大変な手間が発生するため気軽にはできないが、うまく活用すれば大きな効果が望めるようだ。