Vol.0086号
<タックスニュース>
税負担か、それとも保険料か―― 岐路に立つ基礎年金制度
2011年度予算の焦点として、基礎年金の国庫負担率2分の1を維持するための財源問題が浮上している。基礎年金の財源は、国の一般会計からの繰り入れと、加入者の保険料で賄われている。国の負担割合は国民年金法改正で従来の36・5%から2009年度以降は2分の1に引き上げられた。従来の負担割合のままでは保険料の急上昇が避けられないため、これを抑えるための措置だった。
借金で賄うのは本末転倒のため、年金法には「安定財源を確保して実施する」と明記されている。当然、消費税率の引き上げを念頭に置いたものだが、2008年の景気急悪化で増税が不可能となったため、2009、2010年度のみの「臨時措置」として財源を財政投融資特別会計の積立金の取り崩しで賄うことで負担率の引き上げを「見切り発車」した。2011年度予算編成では、このとき財源を先送りしたツケを払う構図だ。
安定財源確保には、大幅増税が必要だが、参院選大敗で状況は絶望的。再び埋蔵金でつなぐ場合でも、年金法の再改正が必要で、ねじれ国会の中で承認されるかは不透明だ。財務省内には「消費税論議ができる政治状況になるまで、元の36・5%に戻すしかないのでは」との声すら出始めている。
<タックスワンポイント>
高齢者の行方不明問題 相続税はどうなった?
全国各地で100歳を超える多くのお年寄りの所在が分からなくなっている。こうした行方不明者に関する相続はどうなっているのか――といった素朴な疑問も出てくるが、相続の世界では、被相続人が行方不明になった場合、行方不明になって7年が経過することで、配偶者や親族など利害関係者が家庭裁判所に「失踪宣告」の請求をすることができる。宣告を受けることで「被相続人が死亡した」と見なされ、その時点で初めて法的な相続が発生する。
相続税などの税務関係を考えてみると、失踪宣告は自動的に行われるわけではなく、親族ら利害関係者が行わない限り、実施されない。そのため、失踪宣告が行方不明から数十年を経た後に行われるケースもあるが、この場合、相続税額の計算は「行方不明になってから7年が経過した日」の遺産価額をベースとして行う。
また、場合によっては、いつまでも失踪宣告を請求せず、相続税をうやむやにしているケースもあり得る話だ。たとえば、親名義の家屋に親子で同居していたり、親の土地に子が家を建てて使用貸借としていたりするケースで、本当は親が失踪、死亡しているのに、意図的に失踪宣告を請求せずに行方不明の状態が続いていれば、実質的に子へ財産が移転しているにもかかわらず、課税が延々と先送りされていることになる。
こうした可能性について国税当局は、「そのようなケースは考えられる」としているが、行政上、こうした行方不明者は失踪、死亡したことになっていないため、「捕捉できない」(同)というのが実情のようだ。どこか不公平な気もするが・・・。