<タックスニュース>

平成23年度税制改正  焦点は「消費税」から「環境税」へ

 9月14日の民主党代表選後の党内体制が、参院選の大敗によって一層不透明となり、政府税制調査会は「代表選が終わるまでは動きようがない」(税調関係者)状況に置かれている。菅直人首相(民主党代表)の続投でさえ確定的ではなく、首相が代われば、税制改正への政権のスタンスも変わってくるので、事実上「長い夏休み」に入っている。
 消費税を含む税制の抜本改正は困難になったものの、それ以外にも平成23年度税制改正の課題は山積している。そのひとつは、同22年度税制改正大綱で「同23年度実施に向けた成案を得る」と明記された環境税だ。昨年の環境省案では、全化石燃料に上流段階で総額約1・1兆円を課税し、さらに石炭へは同約300億円を追加で課税する。ガソリンへの上乗せ課税の一部は軽減して、ガソリン1リットル当たりの税額を現行から5円下げて理解を得ようとしたものだ。
 一般消費者に近いガソリン価格は減税となるが、全化石燃料への課税となるため、石炭や電気、ガスには増税となり、エネルギーを多く消費する産業界の反対は根強い。昨年の税制改正大綱を策定した鳩山由紀夫前首相は産業界に距離を置いたが、菅首相は産業界に接近しており、産業界への幅広い増税に踏み込めるかは不透明だ。
 民主党政調に設立される税制改正プロジェクトチーム(PT)の出方も関係しそうだ。PT座長の五十嵐文彦衆院議員は、野党時代の民主党が環境税案を策定した際の担当者。PTが11月末にも政府税調に出す提言では、環境税導入を強く求めるのではないか、との見方が有力になっている。年末に向けて環境税をめぐる綱引きが激しくなりそうだ。

<タックスワンポイント>

「オタクたち萌える夏」  自作コミック”バカ売れ”で税務は――?

 コミックマーケット、通称「コミケ」が東京ビッグサイトで開催された。メーンは同人誌即売会。同人誌の作り手は学業や仕事の合間に作っている人が大半。ほとんどがもうけ度外視で趣味の世界を楽しんでいる。しかし中には数千部を売る”売れっ子”もいて、税金問題に戸惑うオタクも多い。
 一般的な給与所得者の場合、趣味で同人誌を売った所得は「雑所得」に該当する。ほかの所得と合わせて20万円以上なら確定申告が必要だが、最近はインターネット上で同人税務を指南するサイトもある。こうした一部の情報に、「同人活動による所得は事業所得で申告するとトク」というものがある。事業所得であればほかの所得と損益通算できる。同人活動が赤字なら事業所得で申告して給与所得を圧縮しよう、というわけだ。
 しかし、「趣味としての同人活動は、個別判断にはなるが、一般的には事業所得としては認められない」と税務当局は指摘する。事業所得は、その経済活動が「自己の危険と計算において、独立的に、営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して営まれる業務であって、社会通念上事業と認められるかどうか」によって判断される。どのくらいの時間を同人活動に充てているのかも重要だ。
 同人活動を事業として申告・損益通算できるのは、売れているか売れていないかではなく、客観的にみて「あの人は商売人だ」といえるような専業同人作家になるのだろう。同人活動の経費としては①イベント参加費②印刷代③搬入代④会場までの交通費⑤イベントカタログ代⑥原稿料⑦「売り子」への日当――などが挙げられる。これらはどれも「経費として認められる」(税務当局)。

税理士法人早川・平会計