Vol.0089号
<タックスニュース>
証券優遇税制、延長へ―― 円高不況で市場下支え
金融庁は8月31日、平成23年度税制改正で、同23年末に期限を迎える証券優遇税制の延長を財務省に要望した。当初は優遇税制を廃止し、証券税制を抜本改革することも検討されたが、欧米の景気先行き不安を背景に円高株安が進行する中、優遇税制を延長して株式市場を下支えする必要があると判断した。
証券優遇税制は、上場株式の配当や譲渡益にかかる税率を本来の20%から10%に軽減する措置。証券市場の活性化を図るため、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させようと同15年度に導入された。その後、同18年のアメリカ発金融危機を受け、株価対策として同21年度税制改正で3年間延長された。
一方、民主党内では優遇税制廃止の機運があった。民主党は、個人投資家に証券市場への参加を促すため、上場株式や株式投資信託の配当と譲渡損益に加え、預金金利や先物取引など金融商品に関する損益を通算して課税する「金融商品の一体課税」の導入を推進している。しかし、預金金利の税率は20%で、優遇税制の適用される株式配当や譲渡益と異なっているため、一体課税の導入には、まず税率の一律化が必要だった。
金融庁は7月末から金融税制調査会(座長・大塚耕平副内閣相)で優遇税制の廃止や一体課税導入の議論を進めていた。しかし、8月に入り、外国為替市場で円相場が1ドル=83円台に突入。輸出企業の業績悪化が懸念され、日経平均株価が9千円を割り込んだため、優遇税制の性急な廃止は困難と判断した。
<タックスワンポイント>
油断できない秋の調査シーズン 赤字会社を注視する当局
会社が赤字だからといって「調査なんて来ない」と思っていたら大間違い。中小企業の7割が赤字という中、税務当局は赤字法人も厳しく見ている。調査先としてまず調査官に選定されやすいのが、前期は黒字なのに今期になって赤字に転落した会社。売上のごまかしは利益操作においてよくある手段。社員ではなく社長自らが独断で売上除外を実行しているケースも多く、調査官も売上関係は警戒している。
多額の貸し倒れ損失がある場合も厳しく追及される。貸し倒れの損失計上のタイミングが、いかにも黒字が出たタイミングに合わせているようだと、否認されるケースがある。
社長を中心とした役員給与まわりは、赤字や黒字関係なしに税務調査の大きな山場。「定期同額給与」については資金繰りの都合などで支払うことができず、未払い処理しているケースがあるが、未払いにしたからといってすぐに全額が損金不算入とはならない。しかし、未払いの状態が長く続いてしまうと、実質的には期中減額と変わりなくなる。
役員給与を未払い処理したなら、その理由、未払い給与の清算時期などを書面で示しておいたほうがいい。また社長の家族が役員になっているときは、家族役員の勤務状況と仕事内容がチェックされる。家族役員への給与額が適正だと主張できるようにしておきたい。
ところで、税務調査というと「法人税の調査」ばかりに意識がいってしまうかもしれないが、消費税・源泉所得税・印紙税の調査もある。これらは、会社が赤字でも税額が発生するのが普通だ。特に消費税は、売上ミスが発覚すると、法人税と連動して修正になるケースが多いので気を付けたい。