<タックスニュース>

各省税制改正要望の呆れた中身――  財源なき減税が横行

 政府税制調査会は8月末、各省庁からの平成23年度税制改正要望を締め切った。減税要望が増税要望を上回り、野田佳彦財務相が各省庁に要請していた、減税要望には相当する財源を確保するペイ・アズ・ユー・ゴー原則の徹底はないがしろにされた。
 今後、税調の議論で焦点となりそうな要望の中でも、最も「大玉」で減収額も最大なのは、経済産業省が要望した法人税の5%引き下げだ。経産省はその減収幅を1兆円と見込んだが、1%当たり2千億円という試算基準は、税収が低かった同22年度の法人税収6兆円をベースにした数値。この10年間の法人税収をベースにすると、1%当たり3千億~5千億円の減収にまで拡大するため、5%下げた場合の減収幅はさらに膨らむと財務省はみている。
 経産省は見合う財源を明示しておらず、財務省幹部は「財源の確保をまずは徹底するように要請する」と心中は穏やかではない。法人税の減税は、政府の新成長戦略の目玉となっている政策で、新たに発足させた新成長戦略実現会議でも主要テーマとして取り扱われる見通しだ。経産省は官邸主導の成長戦略を盾に、ナフサ租特の恒久化も要望しており、このままでは財務省との全面対決にもなりかねない。

<タックスワンポイント>

国税庁・「買い換え特例」で通達見直し  2億円要件の判定方法

 国税庁はこのほど、平成22年度税制改正で延長された「特定居住用財産にかかる買い換えにおける長期譲渡所得の特例」について通達を改正し、改正内容とその趣旨について明確にした。同特例は、今年度改正により「譲渡資産の譲渡に係る対価の額が2億円を超えるものを除く」という要件が追加された。
 趣旨説明によると、同特例については、昨年の政府税制調査会で「高額な譲渡益が発生しているにもかかわらず課税を行わないことは税の公平性を損なう」との指摘があった一方、現在の厳しい経済状況下では「住宅・不動産の流動化を促進し、ライフステージに合わせた住み替えを引き続き促進するための税制支援が必要」といった意見もあったことから、2億円の金額要件を設けたうえで延長されたとしている。
 また、同要件における2億円の判定には、①譲渡資産が店舗兼住宅だった場合、特例の対象となる部分や譲渡対価の額をどのように算出するのか②譲渡資産の一部を贈与している場合はどうなるのか―といった疑問が生じるが、今回の通達改正により、①については、通達中に明記された算式に基づき計算すること、②については、高額な居住用財産の一部を贈与することで要件をクリアすることを防ぐため、譲渡の年の前後2年以内に贈与がある場合、譲渡対価の合計額に贈与時の価額を含めて判定することなどが示された。
 このほか、「土地等の先行取得をした場合の課税の特例」「特定の土地等にかかる長期譲渡所得の特別控除」についても同様に通達が改正され、その趣旨内容について明確にされている。

税理士法人早川・平会計