Vol.0099号
<タックスニュース>
給与所得控除の上限1千万円前後 政府税調が議論本格化
政府税制調査会は、所得税への控除に所得制限を設ける検討に着手した。給与所得者の収入の一部を必要経費とみなして概算額を課税対象から差し引く給与所得控除には、上限を設ける方向だ。
給与所得控除の見直し方針を提示した政府税調の全体会合で、尾立源幸財務政務官の「中高所得者に一定の負担を求める」という発言が注目を集めた。給与所得控除の上限は年収2千万円が目安として事前に語られていたが、昨年の政府税調を経験した峰崎直樹内閣官房参与が、「昨年は2千万円で検討したがそれでも高い。1千万円前後にすべきではないか」と提案し、今後の議論は1千万円を軸に展開される方向だ。
さらに法人役員は「一般従業員に比べ、勤務形態が従属的ではなく、給与の自己決定度が高い」ことを理由に、特に高額な給与を受け取っている役員の給与所得控除は、同額を受け取っているサラリーマンよりも低く抑えられる方向で検討を進める。
昨年の政府税調でも、給与所得控除や成年扶養控除の見直しが議論されたが、当時は連立政権に入っていた社民党がことごとく反対し、子ども手当などの見合い分の年少扶養控除の廃止など一部にとどまった。今年は社民党がいないためか、増税案に目立った異論はなく、規定路線になりつつある。
<タックスワンポイント>
国税庁 ホステス源泉税還付で情報提供 計算期間に注意
今年3月に結審したホステス報酬裁判の最高裁判決を受けて、国税庁はこのほど、源泉所得税の納付税額が過大となっていた納税者への還付請求をすでに開始していることを公式にアナウンスした。
同裁判は、ホステス報酬から源泉徴収する税額をめぐって行われたもの。ホステス報酬から源泉徴収する税額は、「(報酬金額-政令で定める金額)×10%」の計算式で求められる。ここでいう政令で定める金額とは、5千円に「当該支払金額の計算期間の日数」を乗じて計算した金額(所得税法施行例322条)とされ、最高裁判決以前、国税当局ではこの計算期間の日数を「実際の勤務日数」として取り扱ってきた。
ところが最高裁は、これを違法と判断。計算期間の日数を「支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日まで」とする見解を示したのである。
今回の還付請求手続きは、源泉所得税の誤納額還付請求書により行い、対象となるのは、納付の日の翌日から5年以内のもの。源泉徴収義務者を通じて還付請求が行われることになるため、国税庁では「誤納額として還付される金額は、ホステス報酬から天引きされたもの。源泉徴収義務者は還付金額を各ホステス等の方に返金する必要がある」と注意喚起している。
また、返金を受けたホステスは、源泉徴収税額が変更になるため、平成21年以前分について修正申告を行う必要がある。