<タックスニュース>

証券優遇税制は2年延長  金融庁サイドが押し切る

 平成23年度税制改正で、上場株式の配当や売却益の税率を本来の20%から10%に軽減する「証券優遇税制」の期限が、同23年末から同25年末まで2年間延長された。政府税制調査会は同23年末に廃止する方針だったが、約1300億円の減税効果がなくなるため、金融庁や国民新党が「景気回復のために株式投資に水を差すべきではない」と強く主張。野田佳彦財務相と自見庄三郎金融相が2度にわたり折衝した結果、最終盤で延長が認められた。
 同23年度税制改正では、法人税実効税率の引き下げや、相続税の最高税率引き上げと課税ベース拡大など大型改正が行われたが、「なぜか証券優遇税制が最大の懸案事項になった」(政府税調幹部)。その理由は、同15年に導入された証券優遇税制の効果を示す客観的データがなかったためだ。証券優遇税制を廃止して法人税減税の穴埋め財源にしたい財務省と、証券業界の意向を受けた金融庁の議論が堂々めぐりとなり、結局、民主党が自見金融相の所属する国民新党への政治的配慮から譲歩した。
 一方、同23年度税制大綱では証券優遇税制の同25年末の廃止について「経済金融情勢が急変しない限り、確実に実施する」とし、リーマン・ショック級の経済危機が再来しない限り、再度延長される可能性は低い。証券優遇税制廃止の代わりに、同26年1月から、個人の新規株式投資について年間100万円を上限に非課税とする「少額投資非課税制度(日本版ISA)」が導入される。日本版ISAは3年間の時限措置で、1人当たり3年間で計300万円の非課税枠が利用できる。

<タックスワンポイント>

小規模企業共済に配偶者加入も  平成23年1月スタート

 メリットてんこ盛りな小規模企業共済が、このほど一緒に働く配偶者などの”共同経営者”も加入できるようリニューアルされた。同共済は厚生年金などのない個人事業主や小規模な企業の役員の退職金用に設計されているもの。月々積み立てた掛け金に応じて、廃業時や退職時に共済金を受け取ることができる。税務上のメリットが非常に大きく、掛け金が全額損金となる上、共済金を受け取る際も一括なら退職所得、分割の場合も雑所得に算入することができる。
 また、一定期間が経過すれば解約した際も解約手当金(加入期間によって手当金の額が増減)を受け取ることができるなど、まさに至れり尽くせりといったところ。ただし、今までは加入できたのは個人事業主の場合事業主本人だけで、配偶者などの事業専従者は加入できないという難点があった。
 しかし、平成22年度税制改正によって、共同経営者にも加入資格が拡大。同23年1月1日から適用開始となった。共同経営者の要件としては、①従事する事業の個人事業主が小規模企業者であること②事業の重要な業務執行の決定に関与していること③共同経営者としての業務執行に対する報酬を受けていること④加入申し込み時点において、共同経営者であること――などがあり、それぞれそれらの事実を証明する書類を用意しなければならない。
 さらに、加入後も共同経営者が引き続き事業に従事しているかを確認するため、書類の提出が義務付けられている。なお、共同経営者として認められるのは2人までなので注意が必要だ。

税理士法人早川・平会計