Vol.0111号
<タックスニュース>
「公務員への増税すごいんです!?」 政府必死のアピールに効果は……
政府関係者が平成23年度税制改正に盛り込まれた国会議員や高級官僚への課税強化を懸命にアピールしている。「国会議員や公務員も血を流している」との姿勢を示す狙いがありそうだ。
同23年度税制改正では、給与所得者の給与所得控除が年収1500万円を超えれば頭打ちにするため、対象となる給与所得者の約1%が増税になる。五十嵐文彦副財務相は、自身のブログに「国会議員、知事など特別職を含めた1500万円超(の公務員)は約5千人」と記して、国会議員や公務員も増税の対象になっていることを強調した。中央官庁では、課長職が1500万円前後のもようだ。
また、勤続年数5年以下の役員の退職金に対する優遇税制の廃止でも、対象は公務員も加えられている。一部の天下り団体では、月々の給与を抑制する一方で退職金を厚めにする優遇税制の「悪用」が常態化しており、「天下った公務員からもしっかり税を取る」(政府税調幹部)ことで、公務員人件費の削減に手を付けられない民主党政権への批判を和らげる狙いもありそうだ。
とばっちりを受けるのが、知事や市長ら地方の首長だ。1期4年の任期を終えるたびに受け取っている退職金も優遇税制廃止の対象になる。民主党政権と地方自治体の間に隙間風が吹く中、新たな火種にもなりかねない。
<タックスワンポイント>
定期借地権の保証金 平成22年分は運用利率1.1%
国税庁はこのほど、定期借地権(定借)の設定に伴い、貸主が預かった保証金の経済的利益について、平成22年分の所得税申告にかかる適正利率を、同21年分より0・2%低い1・1%とすることを明らかにした。
定借保証金は、賃貸住宅や貸店舗に入居する際に支払う「敷金」「保証金」に相当するもの。通常の借地権と異なり契約期間が限定されているため、借地人は地主に対して権利金ではなく、契約期間終了時に返還される「保証金」を支払うことが多い。保証金はほとんどのケースで「無利子」だ。
ところで、この定借保証金を個人的に使ってしまった場合などは、貸主に経済的利益が生じたことから課税対象となる。その際の課税対象額は、税務当局が毎年定める「適正利率」によって計算される。この適正利率は、各年度ごとの10年長期国債の平均利率によって定められ、平成22年は、この年間平均利率が1・19%であることから1・1%とされた。
定借保証金を業務用資金や事業用資金の取得などのために運用した場合は、「適正利率」によって計算した利息分を不動産所得の収入金額に計上する。ただし、こうした保証金は預かり金的な性格を有しており、所得として計上する一方で必要経費としても計上するため、課税関係は発生しない。また、保証金を預貯金や公社債などの金融資産で運用している場合は、その利子収入に対して課税されているため、保証金にあらためて課税されることはない。
一方で保証金を自宅の建築費用に充てるなど個人的に使用すれば、「みなし利益」となり、保証金を返還するまでの各年分の不動産所得の金額に加算する。