Vol.0112号
<タックスニュース>
菅政権の命運握る法人減税 ねじれ対策で法案分割
ねじれ国会の下、民主党が社民党に働きかけた平成23年度予算案と関連法案の修正協議で、税制関連法案の分離案が浮上した。各税法の改正案は1本の法案として国会に提出されており、これを社民党が賛成できる部分と、反対している部分に分離して、賛成できる部分だけを成立させる案だ。
社民党が反対しているのは、法人税の5%減税と成年扶養控除の縮小。法人税減税は「企業が内部留保をさらにため込むだけで、労働者の賃金や製品価格には還元されない」、成年扶養控除は「庶民増税だ」と批判している。
法人税減税は、菅直人首相の指示で同23年度税制改正大綱に盛り込んだ新成長戦略の柱。仮に撤回したならば、野党から批判の的になるだけではなく、首相指示が軽薄なものになってしまう。財務省は表面上、「製造者として、予算案と関連法案には自信を持っている」(野田佳彦財務相)との姿勢だが、法人税減税は菅首相の指示で「嫌々ながら」(財務省幹部)進めた案件。
これほどの財政危機のさなかに1兆2千億円もの減税は、財政規律を至上命令とする財務省的にはどうしても許しがたかった。菅政権の霞が関への求心力は低下しており、政権を何が何でも守ろうとする気概は財務省には感じられない。法人税減税という煮え湯を飲まされた財務省の意趣返しかもしれない。
<タックスワンポイント>
売り上げ伸ばす電気自動車 税優遇が後押し
日産の「リーフ」や三菱の「i-MiEV」といった電気自動車(EV車)が売り上げを伸ばしている。EV車とはエンジンの代わりにモーターと制御装置を搭載し、ガソリンに代えてバッテリーに蓄えた電気を使って走る自動車のこと。
走行距離が短いことやバッテリーを充電するのに時間がかかることなどが普及拡大のネックとされているが、有害ガスが発生しないため非常に「エコ」な自動車でもある。そのため、エコカー補助金の対象車にもなっていたものの、補助金制度は2月8日に終了済み。ただし、税制上の優遇制度はまだ存続中だ。
優遇制度により、自動車にかかる諸税のうち自動車を所有していると発生する自動車税については、登録翌年度の自動車税のおおよそ2分の1が減税に。さらに、自動車を新規に取得する際にかかる自動車取得税、自動車重量税は全額免除となる。
これにより、例えば「リーフ」を購入した場合、同等の非環境対応車を購入した場合と比べると自動車取得税と自動車重量税の総額19万1300円、登録の翌年度の自動車税1万4500円、合わせて20万5800円が減税されることになる。
なお、東京都など一部の自治体では、5年度にわたる自動車税の全額免除制度を設けているためさらにおトクになる。ただし、軽自動車は適用外なので要注意。