<タックスニュース>

税制改正法案メド立たず  減税措置で「つなぎ」も――

 平成23年度予算案が衆院を通過し、年度内成立が確実になった。しかし、税制改正法案などの関連法案は衆院で再可決の見通しが立たず、審議がたなざらしになっており、「4月の統一地方選が終わるまでは、動きはない」(財務省幹部)との見方が有力になりつつある。
そこで浮上してきたのは、3月末で期限が切れる減税措置の取り扱いだ。例えば、鉄鋼製造で用いる輸入石炭への石油石炭税の免税措置が失効して課税されれば、業界全体で四百数十億円の負担増にも及ぶ。粗鋼1トンあたりでは500円程度のコスト増に見舞われ、海外大手としのぎを削る国内鉄鋼各社の価格競争力の低下が懸念され、従業員の生活にも影響を及ぼす。
 また、農林漁業用A重油への石油石炭税の免税も3月末で期限切れだ。対決姿勢を強める野党は、政府の税制改正案には容易に賛成できないが、4月には統一地方選を控えるため、与野党対決が国民の生活に悪影響を与えたくないのが本音だ。そこで与野党は、単純延長の減税は「つなぎ法案」で4月1日以降も暫定的に延長させる方向だ。
 ただ、法人税の減税や地球温暖化対策税の創設など民主党政権が目玉政策としている税制改正は、「つなぎ」の対象にはならない。各方面から「思い切った税制改正」と評価される平成23年度税制改正大綱の実現が危ぶまれている。

<タックスワンポイント>

不動産取得税  ”ねじれ”でJ-REITは大丈夫?

 ねじれ国会の影響が、J-REIT(不動産投資信託)市場にも大きな影を落とすことが懸念されている。
 現在、J-REITを取り扱う不動産投資会社が取得する不動産にかかる不動産取得税の課税標準は、租税特別措置(租特)により、「不動産取得価格×3分の1」に相当する金額まで優遇されている。ところが、この租特の適用期限は平成23年3月31日。同23年度税制改正では、「3分の1」を「5分の2」とした上で延長されることが予定されているものの、ねじれ国会の影響で地方税法改正案に成立の目途が立たず、同租特にも空白期間が生じる恐れが出てきた。
 もっとも、後に法案が成立すれば、同租特が遡及適用されることになり、投資家が受ける分配金への影響は軽微なのもので済む。しかしながら、法案成立の目途が立たない状態が長引けば、J-REITによる不動産取得は、少なくとも法案成立までは低迷を続け、「不動産の流動化」というJ-REITの目的そのものを停滞させる恐れがある。
 現在と同じくねじれ国会だった同20年度税制改正当時は、年度中の税制改正法案の成立が困難だったため、3月31日に急きょ、与野党間で合意できるものに限り、「つなぎ法案(適用期限を法案成立までの期間、延長するもの)」を議員立法により成立させた経緯がある。
 同20年をピークに縮小傾向にあるJ-REIT市場。投資家の信頼が失われつつある今、不安材料となる”法の空白期間”は歓迎できるものではない。まずは、年度末に改正法案が成立するのか、はたまた「つなぎ法案」により手当てすることになるのか。その動向に注目が集まっている。

税理士法人早川・平会計