Vol.0121号
<タックスニュース>
復興構想会議 消費税3%? 所得税10%アップ? 費用捻出に課題山積
東日本大震災からの復興ビジョンを策定する政府の「復興構想会議」の五百旗頭真議長が創設を提唱した「震災復興税」が波紋を広げている。五百旗頭氏は「復興に要する経費は、阪神大震災時の比ではない」として、広く国民に負担を求める必要性を力説。通常の国債と区分する復興再生債をまず発行して、償還財源として増税方針を決めておき、国債市場の信認を維持しようとの考えだ。
巨額の復興費を賄えるだけの税収が期待できるのは消費税だ。1%引き上げれば2.5兆円の税収増が期待でき、すでに民主党内からは「3%引き上げを3年間」という案も漏れてくる。
ただ、一律の消費税引き上げは被災者にも負担を求めることになり、被災地の除外は「還付手続きが複雑で技術的に難しい」(財務省幹部)との指摘がある。もともと消費税増税は社会保障財源に充てることを前提に、政府・与党で検討を進めてきており、野党が賛成しないと法案が成立しない「ねじれ国会」では難しい情勢だ。
一方、財務省内には所得税を定率増税する案も浮上している。所得税額に一律の税率を掛けて増税する手法で、過去に実施した定率減税の逆で、事務手続きも比較的容易だ。ただ、仮に10%増税しても増収は年1兆円強程度でしかない。被災者は雑損控除などで事実上所得税は免除されるが、現役世代の負担感が大きくなるとの指摘がある。このほか法人税では、平成23年度税制改正法案の5%減税を撤回して、逆に増税する案も浮上している。国民の理解を得ながら、巨額の復興費用を確保できる手法を探る難しい舵取りが政府に迫られている。
<タックスワンポイント>
国税庁 被災地支援を本格化 将来の修繕費が損金に
国税庁は東日本大震災で被害を受けた企業を救済するため、災害のあった日から1年以内に支出することが予想される修繕費を「災害損失特別勘定」として経理した場合、災害の起きた事業年度の損金として処理できる措置を実施する。
特別勘定に繰り入れることのできる固定資産の修繕費は、建設会社・メーカーなどが出した見積額、自社の専門技術者が出した見積額など「適正に見積もられた金額」に限られる。棚卸資産・仕掛品などの修繕費には「仕入原価」「製造原価」を用いるのが適当だ。
なお、特別勘定として損金算入した修繕費を1年以内に使い切らなかった場合、その残額を取り崩して益金に算入しなければならない。例えば、100万円を特別勘定に繰り入れたが1年以内に80万円しか支出しなかった場合、残りの20万円は益金に算入するという具合だ。
しかし、被災地の復興が本格化することで、建設業者やメーカーに修繕の依頼が殺到し、被災した企業が1年以内に修繕を完了できないケースも想定される。そのため、やむを得ない事情で特別勘定の残高がある場合に限り、税務署へ「延長確認申請書」を提出することでその取り崩しを延長することができる。