<タックスニュース>

2次補正は1~2兆円の小規模案  「政局優先」と冷ややかな声も

 2011年度第2次補正予算をめぐる与野党の駆け引きが激しさを増している。政府・与党が6月22日の会期末で国会を閉じる方針を示したのに対し、野党側は「2次補正を速やかに今国会に提出すべきだ」と強く反発。菅直人内閣の不信任決議案提出も辞さない構えだ。政府・与党内には、1次補正で積み残した復旧事業を盛り込んだ小規模補正を提出する案も浮上しているが、野党の理解を得られる見通しは立っていない。
 政府は5月2日成立した1次補正予算で、がれき撤去や仮設住宅設置などの復旧事業を盛り込み、予算規模は阪神大震災後最初の補正予算の4倍に達した。「当面必要な復旧予算は網羅した」(財務省幹部)との立場で、本格的な復興対策を盛り込んだ2次補正は、政府の復興構想会議による青写真が出された後の夏以降に編成する方針。
 このため政府・与党は会期通り6月に国会を閉め、2次補正予算案を編成後の8~9月ごろに臨時国会を開く日程を描いている。だが、野党は6月末で閉会した場合、福島第1原発の対応や復旧・復興対策について政府を追及する場を失うことを懸念。2次補正を次期国会に先送りすることに照準を絞り、攻勢を強めている。
 これに対抗するため与党内で浮上したのが小規模補正予算で、1~2兆円程度の事業を盛り込み、野党の批判をかわす狙いだが、野党は「不信任は政権の総合評価」(山口那津男公明党代表)として不信任決議案を提出する構えを崩していない。財務省内には「野党取り込みの成算も無いのに、無駄玉を撃ってもしょうがない」と政局優先の小規模補正に疑問の声も出ている。

<タックスワンポイント>

当局取れるところからガッツリ!  狙われる国際間の高額取引

 海運大手の「川崎汽船」(兵庫・神戸市)が海外の租税回避地(タックスヘイブン)を利用した所得隠しを行ったとして、大阪国税局から約64億円の申告漏れを指摘されていたことが分かった。追徴税額は重加算税を含め約19億円に上るとみられる。関係者によると、パナマの同社子会社が発注した船舶4隻に係る契約額について、法人所得を不当に圧縮するために水増しされたものと判断されたという。
 原則として国内取引にのみ課税が発生する消費税についても課税強化の動きが見られる。アメリカを中心に開催されている自動車レース『インディレーシングリーグ』に参戦するためのチーム運営・広告マネジメントなどを行う東京・港区の事業者が、管轄の麻布税務署からスポンサーとの契約金について消費税の課税処分を受けている。
 消費税は国内取引と外国貨物の輸入取引を課税対象としており、国外で行われる取引は非課税取引とされている。このケースでは、事業者が、「スポンサー契約に係る役務提供は自動車レースの開催地である海外で行われていることから、消費税の課税対象となる国内取引には当たらない」として非課税取引(不課税取引)として処理していたが、当局は、「国内での事業との区別がはっきりしない」などとして約51億円の申告所得にかかる消費税について指摘している。事業者は処分を不服として東京地裁に提訴したが、昨年当局の処分を適法とする判断が示され、事業者の訴えは棄却されている。
 法人税収は伸び悩む中、当局としては「取れるところから取る」、あるいは「取りやすいところから取る」というスタンスで”単価”の大きい国際取引に対する課税を強化することは当然の流れだろう。

税理士法人早川・平会計