<タックスニュース>

酒税、たばこ税の引き上げ構想  基幹税増税を圧縮する狙い

 総額10兆円超とされる東日本大震災の復興財源に、酒税やたばこ税の引き上げ分を充てる案が浮上している。旗振り役は与謝野馨経済財政担当相だ。7月8日の閣議後会見で「基幹税に偏ると非常に痛税感がある。他の税源を検討してはどうか」、同12日には「広く、薄くいろいろな税から少しずつの拠出をお願いするという形がとれないか」と述べ、基幹税以外の増税に意欲を示した。
 最有力候補とみられるのが、酒税の引き上げだ。2010年度税収は約1・4兆円ながら、ビールに比べ、味がほとんど変わらない発泡酒や第3のビールは低い税率にとどまっており「増税余地が大きい」(政府関係者)。たばこ税も昨年10月に1本当たり3・5円の引き上げに踏み切ったばかりとはいえ、欧米に比べれば税率は依然低く、増税の有力候補。政府内では、通信会社が国に支払う電波利用料の引き上げを模索する動きも出ている。
 ただ、いずれも税収や収入規模は小さく、「償還期間を10年に設定しても、最低年1兆円の財源が必要」(財務省幹部)とされる復興費用にはとても足りない。結局は所得税、法人税、消費税の「基幹3税」の増税を柱にする以外ないのが現状だ。
 それでも与謝野氏らが財源探しに躍起になるのは、酒、たばこなど嗜好品の増税や、電波利用料など国民が負担感を感じづらい財源を可能な限りかき集めることで、増税感が直接伝わりやすい基幹税の増税幅を圧縮する狙いがあるためだ。片山善博総務相が「増税が決まらなければ、3次補正を組まないなんてバカげた考えはやめるべきだ」と主張するなど、増税への抵抗感が政府内ですら強い中、必要な財源を確保するには負担感を軽減する仕掛けをいかに組み込むかがポイントになりそうだ。

<タックスワンポイント>

海外進出に潜む税務リスク  移転価格、外国子会社の事業承継

 海外進出には大きなビジネスチャンスが埋まっている半面、税務上のリスクも少なからずある。注意しておきたい代表的な税制を取り上げておきたい。海外進出に伴う最大の税務リスクとしては、第一に「移転価格税制」の適用がある。移転価格税制は、海外の関連企業との取引において第三者とは異なる安い価格で製品や部品、原材料を取引することで、海外の関連企業に所得移転することを防止するための制度だ。
 しかしながら、独立した企業間での取引であるために価格をどう評価するのか、明確な基準がないことで税務当局と企業との間で見解の相違が生じ、多額の申告もれを指摘されるケースが多い。特に、技術提供やブランドの使用権といった無形資産は価額算定が難しい面がある。例年、移転価格税制をめぐる申告もれが指摘されている。国税庁によると、移転価格税制にかかる申告もれは平成17事務年度の2836億円をピークに減少してはいるものの、同21事務年度にも687億円と依然として多額の申告もれが発生している。
そして、外国子会社の事業承継についても触れておきたい。事業承継を行なう際にその外国子会社の株式評価の方法をめぐるミスが多発しているのだ。外国子会社の株式の評価方法は、「国外財産の価額についても、この通達に定める評価方法により評価することに留意する」(財産評価基本通達5 -2)とされている。具体的には、課税発生時点での現地の価額を円換算し、評価額を算出することになる。ただし、類似業種比準方式は一般的に国内での評価に準拠しているもので、当局は「外国会社の場合、純資産価額方式で評価すると考えられる」としている。

税理士法人早川・平会計