<タックスニュース>

“復興増税”8月以降に具体案  所得、法人の増税が有力

 東日本大震災の復興財源確保に向けた関係閣僚会議が開かれ、復旧・復興費用を賄う政府の増税議論が本格的にスタートした。ただ、肝心の必要事業費の算定が遅れているほか、税目を巡る閣僚内の議論も迷走気味で、具体的な増税幅などが決まるのは8月以降にずれ込みそうだ。
 政府は使途を復興に限定した復興債を発行し、財源を調達する方針。復興構想会議は、償還財源に所得税、消費税、法人税の基幹税を中心とした増税を議論するよう提言した。政府内では、消費税は被災者に負担がかかりやすく、「社会保障(の財源)で議論されたので難しい」(平野達男復興担当相)と、所得税と法人税の増税が有力視されている。
 所得税を1割増税する「定率増税」を実施し、2011年度税制改正法案に盛り込んだ法人税減税を凍結すれば、合わせて年2兆円程度の調達が可能だ。ただ、復旧・復興費用の算定はいまだ難航。15日の初会合では、今後5年間に必要な復旧費は10~12兆円との仮試算が示された模様だが、復興費用は「阪神大震災を参考にすると、復旧費と同規模」(政府関係者)との言及にとどまった。
 また税目をめぐって、たばこ税や酒税の検討を求める与謝野馨経済財政担当相に対して、自身も愛煙家の野田佳彦財務相は「税制を通じた『おやじ狩り』」と反発。片山善博総務相は、増税先行の議論自体を牽制するなど、閣僚内の意見対立も目立つ。
 平野復興相は、7月末にまとめる復興基本方針は「必要事業費と復興債の償還期間を示す程度」。それでも財務省幹部は「この2つが決まれば議論は大分整理される。所得税の1割増税は重すぎ、法人増税は3年が限度。消費税もまだ消えていない」と話しており、引き続き議論の行方が注目を集めそうだ。

<タックスワンポイント>

総務省が「地方税制度研究会」発足  24年度改正を視野に

 昨年12月に取りまとめられた平成23年度税制改正大綱では、地方税制度の在り方について、「自主的な判断と、執行の責任を拡大する方向で抜本的に改革をしていく」と盛り込まれている。これを踏まえ総務省は6月29日、地方税制度に係る諸課題を検討する「地域の自主性・自立性を高める地方税制度研究会」(座長=碓井光明・明治大学法科大学院法務研究科教授)を発足し、第1回会合を開催した。
 初会合には片山善博総務相も出席。「一つ一つの自治体が課税団体として、税というものを単に歳入調達という観点ではなく、地域経営の政策手段として考える必要がある。地方税を今後の地方分権改革の中で捉え直して見ていきたい」と語った。
 研究会のテーマは、自治の原点である「税」について、地域住民が自ら決定し、そして自らが責任を持てる地方税制度の実現に向けて検討するというもの。現在の地方税法などで定められている制限税率といったさまざまな制約を取り除いて自治体が自主的に判断して条例で決定できる仕組み作り、そして自治体が課税にあたっての執行責任について議論する。
 主な論点は、①法定任意軽減措置制度(仮称)の創設、②法定税の法定任意税化、法定外税の検討、③制限税率の見直し、④標準税率などの選択自由拡大、⑤消費税・地方消費税の賦課徴収に係る自治体の役割拡大――。研究会は今後、月1回のペースで開催。10月までに論点整理を行った上で報告書を策定する方針で、早ければ24年度税制改正に盛り込みたい考えだ。

税理士法人早川・平会計