<タックスニュース>

法人税収6年ぶり減少  アベノミクスの「果実」収穫できず

 財務省は、2015年度の国の一般会計決算概要を発表した。法人税収は前年度比2042億円減の10兆8274億円となり、6年ぶりに減少した。円高基調が続く中、法人税収は今後も伸び悩む可能性が高く、安倍政権が「アベノミクスの果実」と訴えてきた企業収益の改善に伴う税収増は曲がり角を迎えている。
 税収総額は、前年度比2兆3147億円増の56兆2854億円。バブル期の1991年度(59兆8204億円)以来、24年ぶりの高水準だったが、昨年12月時点での見積り(56兆4240億円)を1386億円下回った。税収実績が事前想定を下回るのは、リーマン・ショックの起きた08年度以来7年ぶりだ。
 下振れの主因が法人税で、見通しを9136億円も下回った。財務省は円高による企業収益悪化が背景にあることを認めており、現在の円高水準が続けば、16年度の法人税見通し(12兆2330億円)の達成はほぼ絶望的。57兆6040億円を見込む税収総額見通しも「達成のハードルは容易ではない」(国内証券エコノミスト)状態だ。
 税収の伸び悩みは、税収増頼みだった安倍政権の今後の財政運営にも大きな影響を与えるのが必至だ。安倍政権は、大型経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案を秋の臨時国会に提出する方針。だが、15年度決算では、補正予算の財源などに活用できる「純剰余金」は2544億円にとどまり、14年度決算時の1兆5808億円から大幅に減少した。政府が今秋の臨時国会に提出する経済対策は10兆円超規模が想定されており、追加の国債発行を余儀なくされて財政悪化が一段と進むおそれがある。
 また、政府は税収の上ぶれ分などを「アベノミクスの果実」として、子育てや介護支援など「1億総活躍」の財源に活用することを検討してきた。税収が伸び悩めば、看板施策の実現にも支障が出かねない。

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<タックスワンポイント>

来るべき相続・贈与のために  一物五価を改めておさらい!

 土地の公的価格と呼ばれるものには、国税庁が7月1日に公表した「路線価(相続税評価額)」のほか、「公示地価」、「基準地価」、「固定資産税評価額」などがあり”一物四価”と言われる。これに実際の市場で取引されている実勢価格が加わると”一物五価”になってしまい、どの地価をどう判断すればいいのか、混乱してしまう人もいるのではないだろうか。相続税が増税され、課税対象者のすそ野が広がっている。一物五価への理解がなければ、正確に相続・贈与を行うことは難しいはずだ。路線価が公表されたこの機会に、「地価」について改めておさらいしてみたい。
 公示地価は、地価公示法に基づき、国土交通省が毎年3月に公表する。公示される価格はその年の1月1日時点の評価となる。この公示地価は、相続税路線価、固定資産税路線価の基礎となる。
 公共事業用地の取得価格算定の基準とされるほか、一般の土地取引価格(実勢価格)に対する指標でもある。企業会計の資産の時価評価、不動産鑑定士の鑑定評価などにも活用される。
 それぞれの地点につき、2人以上の不動産鑑定士が別々に現地を調査し、最新の取引事例や収益の見通しの分析を基に算出する。路線価と違い、土地そのものを評価するもので、建物が建っている土地としてではなく、更地として評価する。公示される際には、「住宅地」「商業地」「宅地見込地」「準工業地」「工業地」「調整区域内宅地」に分類される。国土交通省のホームページなどで確認できる。
 次に路線価(相続税評価額)は、国税庁が毎年7月1日に公表する。相続税や贈与税の税額計算の基準となる。路線価には、「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があるものの、一般的に相続税路線価を指すことが多い。公示地価の80%を目安に評価されている。
 公示地価は土地そのものを対象とした評価だが、路線価は一定の範囲内の道路(路線)に面した土地を評価している。同じ路線に面する土地の価格をまずはすべて同じとしたうえで、敷地の形状などに応じて個別に補正することになる。大都市部の幅広い路線では、道路途中や上下線の車線ごとに別の価格になることもある。公示地価が敷地そのものについての価格なのに対して、路線価は一定の距離をもった「路線」に対して価格が決められる。
 毎年1月1日が評価時点。相続税法に基づいて調査され、国税当局が決定する。個別の路線価は国税庁のホームページや国税局、税務署で閲覧できる。
 固定資産税路線価(固定資産税評価額)は、都税事務所(東京23区)や市町村自治体が地方税法に基づいて決定している。固定資産税や都市計画税、登録免許税、不動産取得税などを決めるもとになる土地価格のことだ。公示地価の70~80%を目安に算出している。相続税路線価と違い、評価が3年に一度なので不動産取引の目安にするのは適さないと言える。昨年が3年ごとに実施される「評価替え」の年だった。都市部では原則としてすべての私有地に対して評価されている。地方自治体の固定資産課税台帳で確認できる。
 基準地価は、都道府県が9月に公表する。更地を評価するという点では公示地価と似ている。調査の主体が、公示地価が国であることに対し、基準地価は都道府県となる。また毎年7月1日時点の評価である点も大きな違いだ。さらに公示地価が都市計画区域内を主な対象とするのに対して、基準地価は都市計画区域外の住宅地、商業地、工業地、さらに「宅地ではない林地」なども含んでおり、公示地価では明らかになっていない場所の地価を把握できる。
 基準地の多くは公示地価と異なっているが、一部は重複する地点もあり、半年ごとの地価の動きをみる際に役立つ。
 最後に実勢価格は、その時点での土地の売買価格のこと。つまり実際の取引が成立する価格のことだ。
 時価とも呼ばれ、売り手と買い手の間で需要と供給が釣り合う価格を言う。取引が行われた場合には、その取引金額が実勢価格になり、取引がない場合には、周辺の取引事例や公示価格などから推定する。
 不動産広告に掲載されている販売価格は、実際に取引が成立するまでは売主の希望価格であり、必ずしも実勢価格とは一致しない。

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