Vol.0364
<タックスニュース>
抜け穴を塞がれた「自販機スキーム」 2016年度税制改正で見直し
2016年度税制改正で、不動産投資の際の節税方法として有名だった通称「自販機スキーム」が完全に使えなくなった。自販機スキームとは、その名の通りジュースなどの自動販売機を使った節税方法だ。
消費税の課税事業者は、売上時に受け取った消費税額と仕入時に支払った消費税額の差額分を国に納めることになる。この時、仕入時に支払った税額のほうが多ければ、差額分を還付金として受け取ることができる。総売上に占める課税売上の割合が95%以上ならば、仕入れにかかった消費税額は全額還付される。
これを賃貸マンション経営にあてはめてみる。マンション購入には数千万円から数億円の出費が必要だが、それに対し家賃収入は、税法上消費税のかからない非課税売上とされる。つまり賃貸マンション経営については、通常は消費税の還付を受けることはできない。
「自販機スキーム」では、マンションを購入した年度内に自販機を設置し、一方で賃貸収入は翌年度以降に入るよう設定する。自販機の売上は全額が課税売上だ。すると購入年度の売上がわずかジュース1本であっても、その全額が課税売上となるため、還付を受けるための基準となる課税売上割合が95%を超えるわけだ。結果として、ジュース1本分の売上によってマンション購入費の数千万円から数億円にかかる消費税全額について還付金を受けられることになる。
翌年度からすぐ免税事業者に変更し、税法で定める「3年間で課税売上割合が著しく変動したときには還付額の調整を行う」というルールをすり抜けてスキームは完成する。
不動産投資を手掛ける業者や富裕層の間で「自販機スキーム」が大流行したことを受け、2010年度税制改正では同手法の封じ込めが図られた。「課税事業者になって2年以内に不動産を購入すると、3年間は免税事業者に戻ることはできない」とすることで、「3年目の調整」ルールから逃げられないように改められたわけだ。
しかしこの見直しには抜け穴があった。課税事業者になって2年間何もせず、3年目に不動産を購入すれば「調整ルール」に引っかからず、自販機スキームを利用することが可能だったからだ。
そこで国は16年度改正で「課税事業者は不動産を購入後3年間は免税事業者になれない」と二度目の見直しを行い、今度こそ同スキームを使えないものとするに至った。
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<タックスワンポイント>
印刷業者のプリントサービス 消費税の課税対象は印刷代だけ? はがき代も?
印刷業者が郵便はがきに文字や図柄を印刷するサービスにつき、消費税が印刷代だけに掛かるときと、はがき代にも掛かるときがある。まず、はがきを注文者が持ち込み、注文者が指定する文字や図柄を印刷するときは、当然に印刷代金だけが課税対象になる。
また、印刷業者がはがきを仕入れ、オリジナルの図柄などを印刷して複数枚セットで文房具店に販売する事業は、その印刷物を自己の商品として販売しているため、はがき代金や印刷代金を含めた文房具店から受け取る対価の全額に課税される。
経理の仕方によって課税対象が分かれるのが、郵便局から購入したはがきを在庫として抱えたうえで、企業や個人からの注文に応じて、企業名などを印刷して引き渡すサービスだ。
基本的には、注文者から受け取る対価の全額が課税対象になる。ただし、はがき購入時に「仮払金」として経理し、注文者への請求時にははがき代と印刷代とを区分のうえ、はがき代について「立替金」として請求したときは、はがき代を消費者の代わりに立て替えていただけとみなされ、その料金には消費税が課税されない。
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