<タックスニュース>

贈与の持ち戻し  「10年に延長」で決着か

一定期間内に生前贈与した財産を相続税の課税対象に繰り入れる「持ち戻し」について、政府・与党は対象期間を現行の3年から10年に延長する方向で検討していることが分かった。一部メディアが報じた。
持ち戻しとは、相続発生前の一定期間内の生前贈与については相続財産に戻して税金を計算するルールだ。現行制度では、たとえ年間110万円まで認められている非課税枠内の贈与であっても、それが死亡前3年以内に行われたものであれば相続財産に含めて相続税を課されることとなっている。
政府・与党は年末にまとめる2023年度税制改正大綱で、この持ち戻しの期間を10年に延長する方向で検討を進めているという。ただし、書類の保存や確認など現場での事務が増大することに対しての懸念も強く、実効性に問題がないかを今後詰めていく方針だ。
また贈与税の課税方式の一つである「相続時精算課税」についても見直しが検討されている。同制度は2500万円までの贈与に対して贈与税を課さず、相続発生時に持ち戻して税額を再計算するもので、「資産移転の時期の選択に中立的な税制ということができる」(日本税理士会連合会)と評価される一方で、一度選択すると110万円以下の贈与であっても逐一申告が必要になるなど、利用のハードルが高く設定されている。21年の贈与税の申告実績をみると、暦年課税を申告した人が48万8千人だったのに対して相続時精算課税を申告した人は4万4千人と、圧倒的に人気がない。そこで23年度改正では、相続時精算課税についても少額贈与時の申告を不要とするなど、利用促進に向けたテコ入れが図られる見通しだ。
また富裕層の資産移転に役立ってきた教育・結婚・出産・育児資金の一括贈与の非課税特例については、来年3月が期限となっていることを踏まえ、政府税制調査会からは「格差の固定化につながり、廃止が適当」との意見が出されている。ただ一方で、自民党の人口減少対策議員連盟が期限を延長すべきだと決議するなど、与党内でも延長を求める声は少なくないことから、議論は難航しそうだ。

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<タックスワンポイント>

生計が別だと小規模宅地特例は使えず  親族への無償提供は適用NG

相続で宅地を引き継いだときには、評価額を最大80%カットできる「小規模宅地の特例」を使えるかどうかで税負担が大きく変わってくる。特例を適用するためには様々なハードルをクリアしなければならないが、そのなかに、被相続人か被相続人と生計を一にしていた親族が利用していた土地のみが対象となるという条件がある。
「生計を一」とは必ずしも同居していることを必要としないが、例えば独立して家計を立てている家族に無償で貸している宅地は、小規模宅地の特例の対象にはならない。
例を挙げてみよう。定年退職したAさんが、一昨年から生まれ育った故郷に戻って暮らしているとする。定年前に暮らしていた家は土地と家屋ともにAさん名義のままだが、今は別生計の長男家族が住んでいる。長男家族からは賃借料をもらっていない。こうしたケースでは将来、Aさんが死亡して相続が発生したときに長男が「小規模宅地等の特例」を適用することはできない。
だが、これが無償ではなく賃料を取っていたら話は変わってくる。有償で子どもや親族に賃貸していれば被相続人が事業として貸していることになるので、被相続人の事業用財産として「小規模宅地等の特例」が適用できるためだ。減額される限度面積は200平方メートルで、相続税評価額が半額になる。
もっとも形式的に賃貸借契約を締結していても、固定資産税程度の安い賃料で賃貸しているのであれば事業とはみなされず、特例が適用できない可能性もあることには注意が必要だ。

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