<タックスニュース>

消費税分の転嫁拒否が急増  10%への増税の影響顕著に

消費税率の引き上げ分を仕入れ価格などに反映しないまま商品の納入先と取引を続けた業者に対し、公正取引委員会は2019年の1年間で、消費税転嫁対策特別措置法に基づき749件の指導・勧告を実施した。10月に税率が10%へ引き上げられた影響が大きく、特措法が施行された13年度以降で最多だった。
消費税転嫁対策特別措置法は、立場の強い小売業者などが中小業者から商品を仕入れる際、増税分の価格転嫁の拒否を禁止している。公取委には19年度、増税分の転嫁拒否などに関する相談が、前年度の4倍に上る2102件も寄せられていた。
公取委によると、指導・勧告のうち121件は、10%への引き上げに絡んでいた。411件は引き上げ前の調査で、増税分を織り込まずに取引価格を据え置く「買いたたき」などの恐れがあった。残りの217件は14年4月の8%への引き上げに関連していた。指導や勧告を受けた業種は、製造業が107件で最も多く、建設業が86件、小売業は85件だった。違反行為では買いたたきが72.0%を占め、税込みの対価から増税分を差し引く減額が23.5%だった。
公取委は具体例も公表した。フィットネス施設の運営企業は、インストラクター業務の委託先に増税分を上乗せせず委託代金を据え置き。機械製造業の企業は、自社システムの保守運用業務について、旧税率の8%を適用した代金を委託先に支払っていた。カルチャー教室の運営会社は消費税率10%を受け、約8000人の外部講師に支払う委託料を引き下げることを決定したものの、公取委の調査をきっかけに撤回した。

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<タックスワンポイント>

本当に必要な保険の保障額を算定する方法  新型コロナで生命保険が再注目

新型コロナウイルスの流行を受けて、生命保険の契約内容を見直す経営者が増えている。志村けんさんなど有名人の死によって、経営引き継ぎの余裕もなく社長が突然倒れるリスクが顕在化したことに加え、深刻な資金繰り難を生命保険の契約者貸付で乗り切る方法が注目されたためだ。
中小企業経営者が生命保険に加入するケースといえば、節税効果にスポットが当たることが多いが、保険の本来の役割とは言うまでもなく、社長にもしものことがあった時の保障だ。残された家族の生活はもちろんのこと、社長身に何かあると、多くの会社は3カ月後には資金がなくなると言われている。運転資金が赤字化するだけでなく、銀行借入金の月々の返済も滞り、「倒産」の2文字がちらつくまでは驚くほど早い。
こうした展開を防ぐために保険が役に立つのだが、ただ保険に入ればいいというわけではなく、加入の際には会社の危機を乗り切るだけの貯金、いわゆる「法人の必要保障額」を算定する必要がある。実際に保険会社から自社の必要保障額のシミュレーション結果を示されたこともあるかもしれないが、保険会社ごとに必要保障額の算出方式は異なり、中には根拠不明な計算式もある。まさに各社バラバラといった状況で、正確な必要保障額を算定するためには、やはり各種月次資料を基礎にすることが欠かせない。
また各月の試算表だけではなく、時系列の借入金の残高表を作って整理することや、運転資金の内容分析も重要となる。どのような科目が毎月どのくらいの金額で発生しているのかを確認し、固定費ですぐに解約できないものがどれだけあるか。できれば最悪の場合に備えて、会社をソフトランディングさせるためにどれくらいの期間と金額が必要なのかまでシミュレーションしておきたい。もちろんそうなる前に、契約者貸付を利用することも検討事項となる。
こうしたリスクへの備えを完璧にしろというのは、極端な話かもしれない。個人の保険で補える部分があるかもしれないし、節税目的で加入している保険で十分補填できるのであれば、それで問題ないだろう。ともあれ大切なのは、自社が持つリスクを常に「見える化」し、適正なコストでリスクに備える体制を作ることだといえる。

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