<タックスニュース>

自民党特別委員会が提言  海外の金融人材確保に税優遇

自民党の外国人労働者等特別委員会(片山さつき委員長)は9月23日、高度な金融知識を持つ外国人材を日本に呼び込む施策に関する提言をまとめた。所得税や相続税などの負担を軽減するよう求めたほか、金融行政に関するさまざまな情報を海外に発信する組織の設立も訴えた。中国の香港国家安全維持法施行を受け、香港が築いてきた国際金融センターとしての地位が揺らいでおり、その椅子を狙った日本の動きが活発化してきた。
提言は「アジアの地政学的状況は日本への人の移動、アジアの拠点の移転を促すものとなり得る」と分析し、香港の情勢をチャンスとみなした。一方、優秀な金融人材が日本での活動を避ける理由として、所得税や相続税が負担になっていることを指摘した。
実際に日本は課税所得が1000万円の人に課す所得税率が33%と、香港(17%)やシンガポール(15%)と比べて高い。相続税に至っては香港やシンガポールに存在しないため、提言では「来日以前から所有する国外資産を対象外とすべきだ」と明記した。
また、業績と連動する役員報酬は上場企業でなければ経費として認められないが、「海外資産運用会社が日本に進出する障害となる」として、経費として扱うよう要求。金融行政の英語対応を進めて手続きの負担を軽くするため、行政文書の英訳や国内制度の対外発信を担う専門組織の必要性も強調した。
政府・与党は年末にかけ、2021年度の税制改正や予算編成に向けた協議の中で具体策を詰める方針。政府は7月に決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で「世界中から優秀な人材や資金、情報を集め、世界・アジアの国際金融ハブとしての国際金融都市の確立を目指す」と掲げた。

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<タックスワンポイント>

2つ以上の会社をリタイアする時  退職タイミングは空けたほうがいい

本業の会社以外に、不動産投資法人や資産管理会社など、複数の法人の要職を兼務している経営者は多い。いつかはそれらの役職を辞して現役生活にピリオドを打つときがくるかもしれないが、そのタイミングは慎重に検討したい。
退職の際に受け取った退職金は、所得税法上の「退職所得」として、「(退職金の金額-退職所得控除額)÷2」の式で計算される。計算式のうちの「退職所得控除額」は勤続年数によって変わり、20年以下の場合は「40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)」、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となる。1年未満の端数が生じたときは切り上げだ。
注意したいのは、一つの会社から退職金を受け取り、一定の期間内に別の会社を退職すると、退職所得控除の勤続年数の部分が調整され、退職所得控除が最大限使えなくなる可能性があるという点だ。その一定期間とは、「退職した年とその前の4年間」となる。
例えば本業であるA社に1996年4月1日に入社したとする。さらに本業の傍らで不動産投資を始め、収益不動産を保有するB社を2008年12月1日に設立した。その後、本業をリタイアすることを決め、A社を16年3月31日に退職し、2千万円の退職金を受け取った。そこから4年ほどでB社もリタイアすることになり、20年11月30日で退社、こちらでも退職金を1千万円もらったとしよう。
まずA社を退職した時の退職所得控除額は、勤続年数20年以下なので、「40万円×20年=800万円」となり、A社から得た退職所得は「{2000万円-(40万円×20年)}÷2=600万円」となる。
次にB社も勤続年数20年以下なので、単純に考えるなら退職所得控除額は「40万円×12年=480万円」となりそうだ。しかし、このケースでは4年以内にA社からも退職金を受け取り、両社の勤続期間には重複している期間(7年4カ月)がある。こうした時、B社の退職所得控除額は、その重複期間に相当する控除額を減額しなければならないのだ。減額される退職所得控除額は「40万円×7年(1年未満切り捨て)=280万円」となり、本来であれば400万円を控除できるはずが、実際に控除できるのは200万円となってしまった。退職所得も本来なら260万円で済むはずが、重複期間があったために400万円に跳ね上がることとなった。
このように、間を空けない退職金の受け取りは控除額が減額されてしまう。複数の会社から退職金を受け取るのであれば、5年以上期間を空けて退職することが望ましいといえる。

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