Vol.0610
<タックスニュース>
やまぬ大企業の「名ばかり中小化」 出前館が1億円に減資
料理の宅配代行サービスを手掛ける「出前館」が、資本金を1億円に減資することを11月12日に発表した。税制上の中小企業となることで、税優遇を受ける狙いがある。コロナ禍での経営難を受けて、税優遇を目的とした大企業による中小化が後を絶たない。企業規模にそぐわない税優遇を利用しているケースも多く、国は中小税制の見直しを検討している。
出前館は、コロナ禍による巣ごもり需要で売上を伸ばし、2021年8月期決算では売上高が前期の2.8倍になった。しかし一方でサービス提供地域を拡大するための投資がかさみ、最終利益は206億円の赤字となっている。
そこで11月29日に開く定時株主総会で、資本金を現在の551億円から1億円に減らすことを決めた。帳簿上は「その他資本剰余金」に振り替える。
法人税法では資本金1億円以下を中小法人、1億円超を大企業と判定し、中小法人には800万円の所得に対する法人税率の軽減、欠損金全額の繰越控除、法人事業税の外形標準課税の免除など多くの税優遇を認めている。そのほかにも設備投資などに対する減税措置も中小企業であれば上乗せ優遇されるなど、中小法人にのみ認められる優遇は多い。
かつて資本金は会社の格を示すものだったが、コロナ禍で多くの大企業が経営不振にあえぐなか、そうした「名」よりも、法人税の軽減税率を代表とする様々な税優遇という「実」を取る考えが広がっている。コロナ禍での大企業の中小化は約1000社に上り、航空会社のスカイマーク、旅行大手のJTB、毎日新聞社、「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトなど有名企業が中小化している。
だが経営体力のある大企業が資本金の額面だけを減らして中小税制を利用しようというのは、いわば“偽装”とすら言われても仕方がないところだ。こうした大企業の「名ばかり中小化」を受け、政府は中小税制の対象の絞り込みを検討している。
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<タックスワンポイント>
お歳暮費用は原則損金に 飲食代には当たらず5千円基準は適用外
今年も各地のデパートでお歳暮商戦がスタートした。今年はコロナ禍もあり、「自宅でぜいたくな時間を」「海外食材で旅行気分」など巣ごもり需要を意識したラインナップが豊富なようだ。
取引先へのお歳暮代は原則的に「交際費」として扱われ、税法上は会社の損金にならず、法人所得から差し引くことはできない。しかし資本金1億円以下の中小企業は、800万円以下か、接待飲食費のうち5割以内の額のどちらか高い金額を損金に算入することが可能だ。よほど大盤振る舞いをしない限り、全額を損金にできると考えていいだろう。
取引先などと食事をした場合に支出する「飲食費」に関して、1人当たりの金額が5千円以下であれば交際費から除外される〝5千円基準〟というルールもある。これについて「お歳暮も飲食物を贈ったという点からこのルールが適用できないか」と考えがちだが、答えはノーだ。飲食費は「飲食その他これに類する行為のために要する費用」であり、お歳暮は「飲食」ではなく「贈呈」にあたるため、5千円基準を適用することはできない。
交際費は範囲が広く、支出する相手もさまざまであるため、いい加減な処理が行われていないか税務当局のチェックが厳しい項目でもある。税務職員はまず証拠書類を検討し、会社業務のために使われているか、私的に使われていないか、支出が会社取引に対してどのような影響を与えているかなどを詳細に調査する。
また取引先を接待した際に接待費の援助を受けていないかなど、交際費を支出した相手についても確認される。接待した日付や場所、相手の名前なども含めて細かく検査するので、お歳暮についても誰に何を贈ったかについて記録を残しておくなどの対策をとっておきたい。
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