<タックスニュース>

安倍首相辞任で財務省復権の兆し  増税機運の高まりも

安倍晋三首相の辞意表明を契機に財務省が復権するとの見方が浮上している。経済産業省出身の「官邸官僚」が重要政策の決定を左右した安倍内閣は「経産省内閣」とも揶揄された。首相交代を機に財務省の影響力が強まれば、コロナ禍で悪化した財政の立て直しに向けた増税機運が高まる可能性もある。
経産省出身の「官邸官僚」の代表格が、2012年の政権発足時から安倍首相の秘書官と補佐官を歴任している今井尚哉氏だ。同じく経産省出身で広報担当の長谷川榮一補佐官、首相演説のスピーチライターの佐伯耕三秘書官らとともに、経産省主導の政策を次々と展開してきたが、今回の安倍首相退陣で官邸を去るとの見方が出ている。
一方、次期首相への就任が確実視される菅義偉官房長官はアベノミクス継承が基本路線。ただ、「積極的な財政出動に後ろ向きな財務省を毛嫌いした安倍首相とは違い、菅長官は隔年だった薬価改定を毎年に変えさせるなど歳出改革に理解がある」(財務省OB)といい、財務省にも付け入る隙はあるようだ。
その菅義偉官房長官の秘書官を12~14年度に務めた財務省の矢野康治主計局長は、これまで主税局が長く、財務省きっての財政規律派として知られる。安倍首相の辞意表明後、頻繁に首相官邸を訪問しており「菅氏の政権構想に財政再建の視点を盛り込むべく入れ知恵しているのだろう」(経産省幹部)などと憶測を呼んでいる。
財務省には、膨大なコロナ対策費を賄うため巨額の国債を発行することで財政悪化が一段と進む現状への危機感が強い。歳出削減に加え、増税に向けた議論を仕掛けるタイミングを慎重に探っている最中だけに、今回の首相交代を機に攻勢に出る可能性がある。

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<タックスワンポイント>

生保と損保の課税上の違い  相続税も贈与税も損保では死亡のみ

年末調整や確定申告でおなじみの生命保険料や損害保険料は控除科目としては似たもの兄弟といえるが、課税関係では似て非なる部分も多いため、それぞれの特徴をしっかり押さえておく必要がある。
まず、生命保険金でややこしいのは、保険料の負担者と受取人が異なる場合の扱いだ。保険料を負担した人と保険金の受取人が異なり、かつ保険料の負担者が存命であれば保険金は贈与税の課税対象になる。そして保険料を払った人の死亡によって保険金が支払われるときは相続税がかかる。だれが保険料負担者であるかが重要であるため、名義を気にせずに生命保険料の控除をすると、後で面倒なことになりかねない。なお、受け取りの原因は満期到来時と死亡時があるが、どちらのときでも保険料の負担者が受取人であれば所得税の課税対象となる。
一方、損保では保険料の負担者と受取人が異なっていたとしても、死亡を原因として支払われるもの以外は相続税や贈与税の課税対象とはされない。例えば妻が所有する居宅の火災保険料を夫が負担していて、火災によって妻が保険金を受け取ったときのような場合だ。加えて、所得税についても非課税扱いだ。なお、火災事故ではなく、妻が満期返戻金を受け取ったときの課税関係も、妻の一時所得として所得税が課税されるものの、夫からの贈与として贈与税がかかることはない。
居宅が焼失したことで雑損控除の対象となり、妻の所得が38万円以下であれば、夫は雑損控除の適用を受けることができる。ただし、損失の金額の計算にあたって妻が受領した火災保険金を差し引く必要がある。この点では不完全な非課税といえるだろう。

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