<タックスニュース>

米国が法人増税を検討  コロナ禍で悪化する国家財政に対応

米国のバイデン大統領が近く、総額3兆ドル(約330兆円)規模の新たな経済対策を示すことが分かった。コロナ禍で弱った経済を立て直す施策に加えて、公立大学の無償化などの格差是正にも乗り出すとみられる。注目されるのは膨大な財政出動に対応する財源確保で、トランプ政権で引き下げられた法人税の増税を検討しているとみられる。コロナ関連支出による財政赤字が各国を悩ませるなか、英国に引き続き米国も法人減税を打ち出せば、いよいよ近年過熱してきた各国間の法人減税競争に終止符が打たれることになりそうだ。
米紙報道によれば、バイデン政権の経済政策チームは数日中にも、大統領や上下院幹部に新たな経済対策の骨子を説明する。コロナ対策を巡ってはすでに3月11日に1.9兆ドルの経済対策が成立したばかりだが、これは家計への給付金など困窮者支援をメインとする内容だった。新たな対策では、今後の経済構造の転換のためのインフラ投資を柱に据える見込みだ。
併せて柱となるのが、各種施策の財源確保案だ。23日の会見でイエレン財務長官は「(経済対策として)長期的な投資不足への対応を提案する」とした上で、「そのための財源確保が必要だ」と述べて増税への理解を求めた。同氏は「中小企業や国民を阻害するような政策は提案しない」と述べたものの、増税の内容は、米国企業が海外で稼いだ収益の課税強化や、トランプ前政権が21%に引き下げた連邦法人税の税率を28%に上げることを想定しているとみられる。ただし野党からの強い反発も予想され、実現するかは未知数だ。
コロナ禍での財政出動を巡っては、英国がすでに恒久的な法人減税を決定している。3月3日に発表された英国の2021年度予算案では、コロナ禍で打撃を受けた経済を支援する各種措置の延長と同時に、同国にとって約50年ぶりとなる法人増税が盛り込まれた。スナク財務相は増税について「きっと不人気だろう」としつつも、「企業がパンデミックを乗り越えられるよう1000億ポンドを超える支援を提供している。企業側に景気回復への貢献を求めることは公平であり必要だ」と述べ、増税の必要性を訴えた。
GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を代表とする多国籍IT企業が法人税率の低い国にオフィスを移転する動きを受け、近年では、それらの企業を誘致するための法人減税競争が過熱してきた。結果として巨大企業が利益に見合う税負担をどの国に対しても負っていないとして、OECD(経済協力開発機構)が主導して国境を超えた課税ルール作りに取り組んでいる状況だ。コロナ禍をきっかけとした法人減税競争の終了は、こうした課税ルールに影響を与える可能性も否定できない。

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<タックスワンポイント>

2年後に始まるインボイスってどんな制度?  中小の経理処理がどんどん複雑に

2019年10月に消費税の軽減税率が導入され、消費税申告に当たっての事業者の経理負担はそれまでより複雑なものとなった。そして今から2年半後の23年10月には、さらに複雑な「インボイス制度」に移行することが決まっている。
インボイスとはもともと商取引に使われる「送り状」のことで、これまでも貿易業者などでは日常的に使われてきた言葉だ。しかし2年後に始まる新制度におけるインボイスとは「消費税の税額票」のことを指す。この税額票によって、複数ある税率ごとの消費税額などを詳細に把握するというのがインボイス制度の目的だ。
このインボイス方式の導入で、企業の経理処理は具体的にどう変わるのか。まず注意したいのは、正式なインボイス方式が導入されるのは軽減税率制度5年目にあたる23年10月からだが、すでに事業者の規模や業態に合わせて新制度に移行していく経過措置期間に入っているということだ。
経過措置である「区分記載請求書等保存方式」は19年の消費増税と同時に始まり、それまでの制度では請求書に記載が求められるのは消費税を含めた税込みの請求額のみだったところを、加えて「品目ごとに軽減税率の対象である旨」と「税率ごとの税込みの請求額」の記載が求められるようになっている。正式には、これらの記載を基に最終的な税率ごとの仕入税額や売上税額を算出することになるが、事業者によっては正確な税率ごとの記録ができないケースもあることから、「売上税額」と「仕入税額」のそれぞれで、経理事務を簡便化する措置が導入されているのが現状だといえる。
23年から“正式”なインボイスを用いた「適格請求書等保存方式」が始まれば、現在の記載事項に加えて、さらに「事業者登録番号」と、請求額とは別の「税率ごとの消費税額」を正確に記載せねばならなくなる。経過措置も終了し、中小企業を含む全事業者は税率ごとの税額を正確に記録して経理区分することが求められるわけだ。
正式なインボイス方式が始まれば、課税仕入を100%控除するためには取引相手が課税事業者でなければならない。同じ商売をし、同じ商品を取引しても、相手が免税事業者であれば、戻ってくるはずの税金が戻らず損をする可能性が生じ、免税事業者が取引から排除される恐れも指摘されている。政府はその点を踏まえ、免税事業者相手の取引であっても一部を控除可能とする経過期間を設けているが、免税事業者相手の取引が年々“損”となっていくことは間違いない。

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