Vol.0066号
<タックスニュース>
千葉・市川市 「市民税1%」のNPO支援
千葉・市川市では、納税者が市民税の1%をNPO法人に寄付する制度を始めて今年で6年目を迎える。鳩山由紀夫首相が所信表明演説で掲げ、政府税制調査会で議論が進む「新しい公共」の先行事例として学ぶべき点がありそうだ。
この仕組みは「1%支援制度」と呼ばれている。納税者は毎年7月ごろ、市の広報誌に印刷された封筒で、支援したい団体と納税通知書番号を書いて郵送するだけ。納税者にとっては、寄付に対する上限付き税額控除と同じ効果を持つ。確定申告も不要だ。
制度に参加する市民や団体は年々増え続け、2009年は9千人が2100万円弱の市民税を130団体に託した。対象団体をNPO法人以外にも広げ敷居を低くし、事業に使わなかった場合には返金させる罰則規定を明確にした。敷居が高い国の「認定NPO法人制度」とは対照的だ。
130団体の活動分野は介護や障害者支援、少年野球にまで及ぶ。ある団体は、民間の遊休地を借り受けるなどして野球場を整備し、試合機会の少ない小学校低学年の児童向けにリーグ戦を組んだ。団体が提出した事業報告書には、保護者や子どもたちの感謝の声と共に、納税者へのお礼の言葉が並ぶ。2009年は100万円を超える支援金が集まった。市民が税金の使い道を選んだ結果、従来の行政の枠を超えた活動が生まれている。
<タックスワンポイント>
駆け込み生保節税に落とし穴 来年3月までの受給開始が条件
究極の生保節税を支えてきた相続税法24条の見直しを盛り込んだ税制改正法案は先ごろ衆議院を通過。「いまのうちに」とばかりに今年に入り”駆け込み現象”が起きているが、ある落とし穴の存在がクローズアップされている。問題となっているのは適用時期。節税が成立するのは来年3月末までの贈与だが、ここでいう「贈与」の意味を取り違えると節税効果は水の泡となってしまう。
生命保険金の受取人と保険料負担者が異なる場合、「みなし相続」または「みなし贈与」として相続税や贈与税がかかってくる。しかし、その保険金を年金払いで受け取る場合には、相続税法24条「定期金に関する権利の評価」による評価額が課税対象となる。たとえば残存期間35年超なら受給総額の20%。受給総額が1億円でも「2千万円」で評価される。究極の相続対策として長年にわたり多くの富裕層から重宝されてきたが、今回の税制改正でシバリがかかることになった。
いま、このすき間を狙って加入する駆け込み現象が起きているわけだが、ここで注意したいのが「贈与」の解釈。今月中に契約し、来年3月末までに名義変更すればよいと考えている人が多いようだが、これは間違いだ。「みなし贈与は年金受給が開始したときに発生するもの」(国税庁)。つまり「来年3月末までの贈与」となるためには、来年3月末までに年金受給が開始していなければならない。名義変更しただけでは「みなし贈与」にはならないのである。
契約から受給開始までが1年という超スピード年金を扱う機関は限られているものの、富裕層の関心は高まる一方。節税狙いの契約の締め切りが目前に迫っているが、「意味がない」ことにならないよう、契約前にもう一度適用関係を確認しておきたい。