Vol.0126号
<タックスニュース>
消費税「2015年度までに10%」 与謝野氏”先行”に反発も
政府が増大する社会保障の「主要財源」と位置づける消費税率の引き上げをめぐり、政府・与党内の温度差が際だってきた。
増税派の急先鋒は、税と社会保障の一体改革を取り仕切る与謝野馨経済財政担当相。「2015年度までに税率10%」を目指し、政府の集中検討会議を拠点に増税の地ならしにまい進する。5月30日には、内閣府と財務省を通じ消費税に関する報告書を公表。消費税増税による景気への悪影響を否定し、低所得者ほど増税の負担が重くなる「逆進性」の問題にも「生涯所得で見れば、小さくなる」と反論するなど、増税に向けた強い意欲をにじませた。
「自民党政権時代から長く税制に関わり、消費増税の難しさを身に染みて知る与謝野氏には、この機会を逃せば次にいつ増税のチャンスがまわってくるか分からないという危機感がある」。財務省関係者はこう解説する。しかし「消費税アレルギー」が根強い民主党内では、「外様」である与謝野氏の突出に反発が広がっている。
「あまりにシナリオができすぎている」。5月31日開かれた民主党の「社会保障と税の抜本改革調査会」では冒頭から消費増税の議論が先行する現状に不満の声が相次いだ。調査会長の仙谷由人官房副長官は「どこかで安定的財源を作らなければならない」と財政問題への配慮を説き、火消しにまわったが、「衣の下から鎧が見える人も確かにいる」と与謝野氏への皮肉も忘れなかった。
政府・与党は6月中の一体改革案取りまとめに向け、増税論議も本格化させる。しかし、与党幹部の一人は党内の合意を取り付けるのは容易ではないと警告する。
<タックスワンポイント>
最高裁が源泉徴収で注目見解 強制執行からの「天引き」NG
最高裁が源泉徴収義務について興味深い判決を下している(平成23年3月22日、田原睦夫裁判長)。内容は、勤めていた会社に”不当解雇”されたとする元従業員に対して、裁判所の強制執行によって支払われた賃金について源泉徴収義務の有無が争われたものだ。
この事件で会社は、強制執行の後、税務当局から支払った賃金に係る源泉所得税の徴収を受けており、徴収された税額に相当する部分を元従業員に対して求償した。しかし、元従業員は強制執行による支払いについては、所得税法上、源泉徴収義務を規定していない、つまり「会社側が勝手に納税したものだ」として支払いを拒否していた。
最高裁は、「( 強制執行による賃金の支払いによって会社の)支払債務は消滅するのであるから、給与等の支払いに当たると解するのが相当である」として実質的に給与と同じであると判断。その上で、所得税法の規定で給与等の支払いが任意であろうと、強制執行によるものであろうと区別はしていないことから、「源泉徴収義務を負う」と結論付けている。
また、裁判長の補足意見として強制執行手続きに特有の性質に触れ、「執行債務者(会社)が徴収すべき源泉所得税に係る手続きは予定されていないから(中略)、給与等の債権者(元従業員)が民事執行法により弁済を受ける場合には、源泉徴収されるべき所得税相当額をも含めて強制執行し、源泉徴収義務者は強制執行により支払った給与等につき源泉徴収すべき所得税を納付した上で所得税法222条に基づき求償する」と納税手続きの流れを分析している。