<タックスニュース>

政府税調 「臨時増税」改正大綱を策定  所得、法人、たばこ税が柱に

 政府税制調査会は11日、東日本大震災の復興財源にあてる臨時増税に関する税制改正大綱をまとめた。月内に招集される臨時国会で成立を目指すことになるが、その前に与野党協議のハードルが待ち構えている。
 「復興債の償還財源を税でやるのなら、もう少し狭く、絞れるのではないか」「たばこ税を上げることは許さない」
 自民党税調の野田毅会長は10日のBS11の番組収録で、政府案を強く牽制してみせた。政府税調は臨時増税の柱として所得、法人、たばこ税の増税を想定。さらに大綱では、未成立の今年度税制改正法案で予定している所得控除縮小や地球温暖化対策税の実施時期修正も盛り込んでいる。自民党はたばこ増税に加え、控除縮小や温対税導入に対しても難色を示しており、政府に大綱の大幅な見直しを迫るのは必至だ。さらに、自民党側は復興債の償還期間や税外収入の算出根拠など、予算・税制の根幹部分から問い直す構えで、仮に与野党協議は始まっても容易に妥協点は見いだせそうにない。
 とはいえ、大綱には、被災地の新設企業の法人税を5年間免除する税制特例措置など「復興地域に対するインパクトのある政策」(安住淳財務相)も多く、早期実施を求める被災地の声は強い。さらに政府は沖縄振興策として同様の法人減税を検討するなど、今回の大綱成立を前提に年末の来年度税制改正作業を進める方針で、与野党協議が停滞すれば、税に関する一連のタイムスケジュールも後ずれしかねない状況だ。

<タックスワンポイント>

大分 総合病院が金歯を売って裏金に……記帳ないと税務調査来る!?

 大分県内の総合病院で、歯科患者の歯の詰め物に使われる貴金属を売却し裏金にしていたことが分かった。この病院は2010年までに150万円をプールしていたという。詰め物一つひとつに使われる金属の量はわずかだが、「ちりも積もれば山となる」――。売却益に国税当局も目を光らせている。
 裏金は、歯科が買い取り業者と取り交わした書類が病院の会計課に送付されたことにより発覚したという。会計担当者が長年この取引を把握せず、裏金の習慣が常態化していた事情には、患者から詰め物を引き取るやりとりがあったか否かが不透明であること、そして金属の売却益が歯科医療に直接関わる事業収入ではないため目立たなかったことが挙げられるだろう。
 しかし、このような収入にも注目しているのが税務当局だ。歯科コンサルティングを得意とする都内の税理士は、歯科医院やクリニックの経理指導を行う際、金属売却の有無を確認し、売却している場合は買い取り業者との取引の証票を残した上で、売却益を「雑収入」として必ず計上するよう指導しているという。「金属くずは必ず出るもの。会計上、その『行方』がわからなければ着目される可能性が高い。歯科医の金属売却益は金額的に大きくないだけに、記帳漏れがあることで自由診療の報酬や窓口での歯のケア商品の販売など、ほかの簿外収入も疑われてしまうのは損だ」と語る。
 鉄や銅、アルミニウムなどの金属くずを大量に排出する製造業・建築業が行うスクラップの売り上げ除外は、脱税の常とう手段として強く警戒されている。国税当局では、各種金属の相場をチェックし、関連企業の申告内容と照らし合わせているといわれる。事業内容や規模から金属くずの量を予測し、買い取りの実勢価格から売却益を逆算することはそれほど難しい作業ではない。金をはじめ金属価格が高騰しているだけに、この種の脱税への当局の動きは活発化するものとも考えられる。

税理士法人早川・平会計