Vol.0163
<タックスニュース>
98年以来14年ぶり 暫定予算の編成作業開始 国会の機能不全ぶり明らかに
政府・与党は、2012年度予算案が今年度内に成立しなかった場合に備え、当座の必要な歳出・歳入を盛り込んだ暫定予算を編成する検討を始めた。編成すれば98年度以来14年ぶりの事態。国会の機能不全ぶりを改めて内外に印象づけることになりそうだ。
暫定予算は新年度予算の成立が遅れた場合、期間を区切って社会保障給付など当面必要な事業に限り編成する。戦後23回編成されており、編成には国会の議決が必要で、本予算が成立した時点で吸収される。
予算案は、憲法の衆院優越規定で衆院通過後30日で成立するが、閣僚答弁などを巡って審議が空転し、衆院通過が3月6日以降にずれ込むことが確実となった。野党が多数を占める参院で早期に審議を終えるのは難しく、安住淳財務相は2月28日の会見で「物理的に考えて年度内成立が厳しい日程になってきたのは事実」と認め、3月半ばに暫定予算編成の是非を判断する考えを示した。
暫定予算では、失業給付や地方交付税など4月上旬に支払いが必要なものや、東日本大震災の復興関連予算などが盛り込まれる見通し。だが、高校無償化などの与野党対立案件や、緊急性の無い事業の関係費は除外される見通しのため、年度当初の事務作業が停滞する可能性が高い。
憲法では、参院が予算案を否決すれば予算案が衆院案でただちに成立する。ある財務省幹部は、「たとえ1週間程度でも予算書作成などの作業負担は同じ。海外にも政治の混乱ぶりをさらすことになってしまう。どうせ否決するのがわかっているのだから、早く審議を進めて欲しい」とうんざりした声で語る。
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<タックスワンポイント>
税と社会保険料の徴収一元化 「歳入庁」創設へ向け4月に中間報告
政府は2月28日に開いた「社会保障と税の一体改革」の関係閣僚会合で、「歳入庁」の創設について、4月中に組織の概要などを盛り込んだ中間報告をまとめる方針を決めた。政府・民主党が新設を目指している「歳入庁」は、社会保険料と税の徴収を一元的に行うための組織で、国税庁と旧社会保険庁の業務を引き継いだ日本年金機構を統合させる案が軸になる見通し。会合には、岡田副総理兼社会保障と税の一体改革担当相、藤村官房長官、安住財務相らの関係閣僚が出席した。
これに関連して藤村官房長官は記者会見で「消費税の議論が本格化する前には、歳入庁のイメージを作っておく必要がある」などと述べた。その一方、安住財務相は、関係閣僚会合のもとで中間報告をまとめる政務官級の「作業チーム」に対して、「取りづらいところに行って税金を徴収する国税の仕組みと、社会保険料の徴収の融合が本当にプラスかどうかも含めて、メリット、 デメリットをすべてテーブルに出して議論してもらいたい」と述べ、「(歳入庁を創設するという)結論ありきではない」との見解を示した。
政府では、税と社会保障の情報を一元的に管理する「共通番号制度」の導入も推進していることから、与党内からは「歳入庁」のような組織を創設しなくても、「情報を共有化できる基盤が整備されれば十分だ」といった指摘もある。
政府・民主党では、歳入庁を内閣府などの「財務省外」へ移管することも検討しているため、国税庁の分離を阻止したい財務省の抵抗は必至とみられている。
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