<タックスニュース>

マイナンバー普及促進  従来の保険証を廃止へ

政府は、現行の健康保険証を将来的に原則廃止し、マイナンバーカードに一本化する方向で検討に入った。6月にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に明記する方向で調整を進める。取得の進まないマイナンバーカードの全国民への普及を実現するため、より踏み込んだ施策を講じる。
健康保険証とマイナンバーカードの紐付けは、すでに昨年10月に導入されている。当初は昨年3月にスタートする予定だったが、先行して運用を開始した医療機関でトラブルが多発したことを受け、約半年後ろ倒しにした。
マイナンバーカードに紐付けられた保険証は、専用のカードリーダーを設置した医療機関や保険薬局で使うことができ、過去に処方された薬や健診などの情報が確認できる。しかしマイナンバーカードが利用できる設備を導入済みの医療機関はいまだ全体の2割弱にとどまり、普及しているとはとてもいえない状況だ。
マイナンバーカードへの統合を踏まえた現行の保険証の廃止は、今になって突然出てきた話ではない。20年11月に自民党の政務調査会とデジタル社会推進本部がまとめた提言では、マイナンバーカードの全国民への普及を実現するため、従来の保険証の将来的な廃止などを要望していた。提言では、マイナンバーカードと健康保険証を紐づけたとしても多くの人がそのまま保険証を使い、カードへの移行が進まない可能性もあるとして、法令で健康保険組合などに課される保険証の発行義務を緩め、「将来的に健康保険証を廃止する」としていた。
当時の提言では現行の保険証を廃止するタイミングを2030年頃としていたが、今回厚労省が了承した案では、23年度から医療機関に対してカードリーダーの導入を義務付け、24年度中には健康保険組合が健康保険証を発行するかどうかを選択できるようにするなど、スピード感を強めている。
岸田首相は、今年度中に国民のほぼ全員にマイナンバーカードを行き渡らせる目標を掲げているが、5月1日時点で交付枚数5576万5137枚、交付率は44%と達成にはほど遠い状況だ。先日開かれた全国知事会など地方6団体との協議では「交付推進に協力に取り組むようお願いする」と要請するなど、目標達成に向けて働きかけを強めている。

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<タックスワンポイント>

相続時精算課税、2年目以降の注意点  申告を忘れると踏んだり蹴ったり

贈与税の課税制度には、年間110万円までが非課税となる「暦年課税」と、トータル2500万円までの贈与税を非課税とする「相続時精算課税」がある。
このうち相続時精算課税についてもう少し詳しく説明すると、親や祖父母から贈与を受けた財産について、贈与者の死亡時に相続財産に合算して最終的に相続税で精算する制度だ。何回贈与されても2500万円までなら贈与税が非課税となり、2500万円を超えても一律で20%の贈与税で済む。
最終的に相続財産に繰り戻して課税するため完全に無税とはいかないのだが、相続発生の際にも贈与時点での評価額で税額を算出するため、贈与から相続の間までに値上がりした財産については相続税の節税になるというわけだ。
ただし同制度について注意したいのが、制度選択2年目以降の処理だ。相続時精算課税を一度選ぶと二度と暦年贈与には戻れないため、「申告が毎回必要な暦年課税、一度きりの精算課税」と考えてしまいそうだが、そうではない。前述のとおり相続時精算課税は、トータルで贈与された額を相続発生時に精算しなければならないため、制度選択後にどれだけの額が贈与されたかも重要な情報となる。そしてその情報は「生前にこれだけ贈与しました」とまとめて申告するのではなく、暦年課税同様、贈与した年ごとの申告が必要となっている。
仮に昨年に相続時精算課税の選択届け出をしたからと安心してしまい、今年の贈与について翌年3月の期限までに申告をしないと、その分については相続時精算課税の対象とならず、かといって暦年贈与にも戻れず、何の非課税枠もない単なる贈与として扱われてしまう。例えば1年目に1000万円、2年目に1500万円を贈与して非課税枠を使い切るつもりだったケースで2年目の申告をうっかり忘れてしまうと、1500万円の全額に贈与税が課されることとなるのだ。
贈与の課税制度の選択については、やむを得ない事情があった時には期限後の事後申告が認められることもあるが、一度制度を選んだ後の贈与については救済措置が一切存在しない。期限を1日でも過ぎた瞬間、制度の対象外となり、オーバーした日数に応じた無申告加算税、延滞税、そして高額の贈与税を負わされることになる。良かれと思って選んだ制度で損をしないよう、2年目以降の申告を絶対忘れないようにしたい。

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