<タックスニュース>

NISA拡充で投資を促進  家計資産2000兆円を市場へ

政府が5月31日の新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)で示した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の原案で、NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)の制度拡充案が盛り込まれた。家計の金融資産が2000兆円に達する中、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させて日本経済の活性化につなげたい考えで、年内をメドに「資産所得倍増プラン」としてまとめる方針だ。
NISAは株式や投資信託などでの運用益が非課税になる制度で、「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類がある。一方、イデコは将来に向けて毎月掛け金を掛け、自分で年金を作る制度。NISAと同様、通常の金融商品にかかる運用益が非課税となる。NISAとの税制上の違いとしては、掛金が全額所得控除の対象となり、所得税と住民税の節税効果が得られる点が挙げられる。また、資産を受け取る際にも、「退職所得控除」や「公的年金等控除」の対象となる。どちらも、運用して得た利益を非課税とすることで、国民がより資産形成を始めやすいようにと国が作った制度だ。
イデコをめぐっては、加入対象年齢を現行の64歳以下から65歳以上に引き上げる。政府は昨年施行した改正高年齢者雇用安定法で、企業に対し労働者が70 歳まで働けるよう努力義務を課しており、これに沿った措置だ。NISAについては、現行は2023年までとなっている制度の恒久化や、年間拠出額の上限の300万円程度(現在は約120万円)への引き上げなどが検討されている。
岸田政権は、賃上げで家計の所得を増やすことに加えて、預貯金を投資に向かわせることで、持続的な企業価値向上の恩恵を家計にもたらす好循環を作り出したい狙いだ。

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<タックスワンポイント>

遺言で遺産分割を禁止できる  デメリットも多いので慎重な検討が必要

遺言を残すと遺産分割の内容に大きな影響力を及ぼすことができるのは知られた話だが、遺産分割そのものを遺言で禁止できることをご存じだろうか。分割を禁止されると、それぞれの相続人がいかに財産を欲しくても分割協議を行えない。遺産は相続人全員の共有状態となり、特定の誰かのものにはならない。この遺産分割の禁止は、遺産分割の過程で起こり得る争族トラブルを防ぐために認められているルールだが、利用する上では注意すべき点も多いので制度内容をしっかり把握しておきたい。
まず押さえておきたい点として、遺産分割の禁止は決して「遺言どおりに遺産を渡すよう強制する」というルールではない。そもそも遺産を渡すこと自体をできなくする仕組みだということを覚えておこう。さらに、遺産分割の禁止は一定期間しかできない。その期間とは原則5年だ。たとえ遺言で分割を禁止しても、それは5年間の効力しか持たない。
遺産分割はどのようなケースで行われるか。代表的なものは、相続人のなかに未成年者がいる場合だろう。未成年者でも特別代理人を立てることで分割協議を進めることは可能だが、手続きが煩雑で、いらぬトラブルの種にもなりかねない。そこで未成年者が成年するまで遺産分割を禁止し、本人が協議に参加できるようになるのを待つというケースが考えられる。
相続人間の折り合いが悪くてトラブルが予想されるケースもある。5年で関係性が改善するかは保証できないが、少なくとも頭を冷やす時間が稼げるという意味で検討に値する一手だろう。
そのほか、相続財産の全容が不明だったり、相続人の確定に時間がかかったりというような場合も、調査期間を設ける目的で遺産分割が禁止されることもある。なお分割の禁止は、遺言で指定する以外にも、関係者全員の合意があるときや、一部の相続人の申し出に基づいて家庭裁判所が認めたときも行われる。
トラブル防止の観点からは利用価値の高い遺産分割の禁止だが、デメリットも多く存在する点には気を付けたい。例えば分割を禁止された遺産は相続人全員の共有財産となるため、自由に処分したり動かしたりができなくなる。共有財産が自社株であった場合、会社経営に重大な影響を及ぼすことも考えられる。
さらに分割を禁止しても相続税は待ってくれない。申告期限は相続から10カ月であるため、実際に遺産を受け取っていない状態で、それぞれの相続人は法定相続分に従った税金を納める必要がある。しかも分割が終わっていない財産は、原則として配偶者控除や小規模宅地の特例といった各種の特例を利用できない。分割見込書を提出するか、あるいは後から更正の請求などを行うことで最終的には優遇を受けられるが、手続きが煩雑で一時的には持ち出しになる可能性もある。
遺産分割の禁止を検討する際にはこうしたデメリットがあることも踏まえ、専門家に相談した上で慎重に検討したい。

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