<タックスニュース>

止まらない給付金詐欺  性善説の制度設計が裏目に

「親子4人らで9億6000万円詐取」「国家公務員が幼なじみの同僚と2億円を不正受給」――。新型コロナウイルス対策として売り上げが減った中小企業に最大200万円を支給する「持続化給付金」を巡る詐欺事件が後を絶たない。血税の垂れ流し状態に歯止めがきかず、不正も含めた自主返還額は166億円にも上る。一体なぜ急増したのか。
持続化給付金は2020年5月から申請が始まり、コロナ禍で中小企業(やフリーランスを含む個人事業主ら)の売上が半減した場合、最大200万円を支給してきた。申請期間は21年2月までで、約424万件に計約5.5兆円を支給。半数以上は申請から最短約2週間で入金された。政府は不正が認定された事業者らには返還を求めていて、対応がない場合は氏名や住所を公表している。自主返還を含めた返還申し出数は5月26日時点で約2.2万件、166億円に上る。
不正は制度が始まってまもなくして全国各地で発覚した。これまでに税務署職員や独立行政法人「国立印刷局」勤務の国家公務員、日本中央競馬会(JRA)の厩舎関係者ら約170人の不正受給が判明。東京地裁は経済産業省のキャリア官僚2人も不正受給していたとして、懲役2年6カ月の実刑判決を言い渡した。
巨額詐欺事件も相次ぐ背景には、提出書類の偽造がある。一連の不正受給は「『性善説』に立った制度が悪用された」(経済官庁幹部)との見方で、大半が職業や収入などを偽って申請したとみられる。支給までの迅速さを優先するため、確定申告書の控えや売り上げ台帳の写しなど必要最低限の書類があれば申請できるようにした制度のスキを突かれた。
また、書類をスマートフォンで撮影した写真や手書きの書類も「提出用の書類」として認めていたことで不正が急増した。20年9月には審査方法を厳格化したが、それ以前の支給分に関する不正は今後も増える見通しだ。別の経済官庁幹部は「当時は支給を止めるわけにもいかなかった。不正は数万件規模にもなるんじゃないか」とこぼす。初めて不正受給が明るみになって約2年が経つ中、捜査終結のめどは見えないままだ。

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<タックスワンポイント>

贈与財産の持戻しが孫に適用される4つのケース  相続財産を受け取ってはいけない

高齢者が相続税対策として生前贈与を行うのであれば「子ではなく孫にやれ」と言われることがある。それはなぜかといえば、子へ渡した財産は、贈与税がかかった上に、将来的に子から孫への相続が発生したときにまた相続税がかかるということが一つある。孫に直接渡してしまえば、課税のタイミングを一度減らせるというわけだ。
さらにもう一つ大きな理由に、孫への贈与は「生前贈与加算」の対象にならないという点が挙げられる。生前贈与加算とは、「贈与財産の持戻し」ともいわれ、死亡前3年以内に行われた贈与については、相続財産に戻して税金を課すというルールだ。余命わずかな資産家が、駆け込み贈与で相続財産を減らせないよう設けられた仕組みだ。
生前贈与加算の対象となるのは、配偶者や子といった法律に定められた相続人だ。逆にいえば相続人以外への贈与は、死ぬ1日前であっても持戻されない。そしてこれに当てはまる資産の承継先が孫というわけだ。つまり子への贈与は早いうちから計画的にやっておき、余った財産については死ぬ直前に孫にやれば、贈与税はかかるものの相続税を大きく減らすことが可能だ。ただし孫への贈与でも、例外的に持戻しの対象となってしまうケースもあるので、しっかり把握しておきたい。
例えば、孫が遺言で遺産を受け取るケースだ。生前贈与加算の対象となるのは、厳密には法定相続人ではなく、「相続で財産を受け取った人」となっている。つまり本来は持戻しの対象ではないはずの孫も、遺言で財産を渡すと書かれてしまうと持戻しの対象になってしまうのだ。逆に、本来は持戻しの対象となる子などの法定相続人でも、相続放棄をすれば持戻しの対象から外れることも併せて覚えておきたい。
次に、孫が生命保険金の受取人となっているケース。生命保険金を受け取ってしまうと、みなし相続財産を遺贈で受け取ったと認定され、1つ目のケース同様に生前贈与加算の対象に含まれてしまう。さらに孫は、法定相続人に認められている1人当たり500万円の生命保険控除も使えないため、相続財産は増えるが控除枠は増えないと踏んだり蹴ったりだ。
また、孫が代襲相続人となっているケースもアウトだ。代襲相続人とは、本来の相続人である子がすでに死亡しているときに、その相続の権利が次世代に引き継がれる仕組みを指す。代襲相続人である孫は、子(孫にとっての親)に代わって法定相続人の地位を得るため、持戻しの対象となってしまう。
最後が、孫養子だ。孫養子も3つ目のケースと同様、法定相続人としての権利を得ているため、生前贈与加算を免れることはできない。
現在、政府内では相続税と贈与税の一体化に関する議論が進んでいて、将来的には持戻しの対象期間が3年以上に引き上げられるとの見方もある。持戻しの縛りを回避できる孫への生前贈与は今後さらに重要になっていくことを踏まえ、利用する上での注意点を忘れないようにしたい。

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