<タックスニュース>

エヌエヌ生命に行政処分  狙いはまたもや「節税保険」

過度な節税が問題視されていた「節税保険」を巡り、金融庁は2月17日、オランダに本拠を置く外資系生命保険会社のエヌエヌ生命保険に対して保険業法に基づく業務改善命令を下したことを発表した。金融庁は節税保険の販売への監視を強めていて、昨年7月にマニュライフ生命保険が同様の処分を下している。さらに国内大手の明治安田生命にも立入検査を行う方針だ。
今回の業務改善命令では、処分理由について主に(1)経営管理態勢・業務運営態勢の不備、(2保険本来の趣旨を逸脱した商品開発および保険募集――を挙げた。(1)では、営業優先、コンプライアンス・内部監査軽視の企業文化・風土が醸成されていると指摘し、そうした文化・風土が節税保険のような不適切な商品開発・保険募集推進を招いたとした。また(2)では、金融庁から保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を防止するための各種指針が示されているにもかかわらず、同社が経営陣の関与の下、組織的に本件節税保険を開発・販売を決定したと指摘した。公表された説明ではエヌエヌ生命が会社として防止策が機能しているかの確認すら実施していないとして、自主的な改善が期待できないことから処分に踏み切ったとしている。
金融庁が問題視するのは、「名義変更プラン」と呼ばれる定期保険の一種だ。多額の死亡保険金を受け取れる契約を当初は法人名義で締結して高額な保険料を支払った後に、名義を経営者個人に変更し譲渡した上で解約し、支払った保険料の多くを返戻金として個人が受け取る仕組み。返戻金は「一時所得」として扱われ、通常の役員賞与などの所得と比べて税負担を抑えられる。
節税効果をアピールする保険商品をめぐっては、2018年ごろより生命保険各社の販売が過熱した。保険料を全額経費として計上でき、利益を圧縮して法人税の支払いを遅らせる効果がある経営者向けの保険について、国税庁は19年2月、税務の取り扱いを見直す方針を示した。これを受け、日本生命や第一生命など大手生保4社はいずれも該当商品の販売を停止。しかしその後、「名義変更プラン」商品が一部の生保から登場し、この手法も問題視した国税庁は、21年6月に実質的に認めない通達を出していた。
だがその後も一部の生保会社では節税効果を強調した販売が続いていたことから、昨年2月にマニュライフ生命、SOMPOひまわり生命保険、FWD生命保険、エヌエヌ生命保険の4社に対して立入検査を実施し、報告徴求命令を出すに至った。なかでもマニュライフ生命では経営陣をはじめとして組織的に販売を展開していたとみられ、悪質性が高いとして7月、節税保険を巡っては初めて、業務改善を命じる行政処分が下されていた。今回のエヌエヌ生命は2例目となる。
金融庁の“攻勢”はまだまだ終わりそうにない。2月20日には、国内生保大手の明治安田生命保険に立入検査を行う方針を固めたことが明らかとなっている。同社は営業職員による着服などの不祥事が昨年明らかになっており、今回の検査では、こうした職員への管理体制を中心に調べるという。ただし、併せて節税保険の販売についても確認するといい、調査の結果次第ではさらに厳しい追及に発展しそうだ。

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<タックスワンポイント>

議決権の「準共有」ってなんだ?  事業承継時のトラブルの種

相続が発生した時、遺産分割協議が終わるまでの相続財産は、原則として「相続人らが共有する」状態になる。これを民法では「準共有」という。分割協議がスムーズに終わればよいが、相続人のあいだで同意が得られないなどの理由で協議が終わらないと、いつまで経っても相続財産は全員が準共有している状態となってしまう。
この準共有が大きなトラブルの種になるのが、事業承継に当たっての自社株の引き継ぎだ。例えば死亡した先代社長が900株を持っていた。相続人が3人の子だけだとすると、遺言がなければ900株は3人の準共有状態となる。準共有なので、遺産分割協議が終わるまでのあいだ、900株は「法定相続分に沿ってそれぞれが300株ずつ持ち合う」のではなく、1株1株が「3人の共有」状態となる。そして準共有となった株式の議決権は、「その権利行使の決定方法を、過半数をもってこれを決する」と規定されている。つまり後継者以外の複数の相続人が協力すれば、遺産分割が整うまでのあいだ「全株式の過半数」を得て、全議決権を持つこともあり得るのだ。
実際に過去には、遺言を残さずに先代社長が死亡してしまったため、後継者ではない次男と三男が結託して全株式の議決権をネタに長男を脅すという事例が起きたこともある。長男は議決権を得る引き換えとして、二人に法定相続分を大幅に超える相続財産を譲らざるを得なかったという。
こうした事態を未然に防ぐためには、何はなくとも先代がしっかりしているうちに遺言を残しておくべきなのは言うまでもない。最低でも遺留分を考慮に入れた遺産分割を遺言で指示しておけば、トラブルは大きくならなかったはずだ。さらに言えば、そもそも生前のうちに後継者に自社株式を譲っておけば、自社株の散逸リスクは防止できただろう。
ただ他をかえりみない後継者への資産集中は、やはり争族トラブルの原因となりかねない。後継者以外の相続人にも配慮した遺言を残すことが、最終的には円満な事業承継につながるということを忘れずにいたい。

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