<タックスニュース>

自民党“裏金”問題  野党側は「脱税」を指摘

 元日の能登半島地震を受け、被災地支援策の議論が急がれるが、国会は自民党派閥を巡るパーティー券問題で紛糾している。ノルマを超えた売り上げの還流分が4000万円超の議員のみが立件される軟着陸となったためだ。野党はこの「裏金」を受けた議員と受領額リストの提示を求めたほか、「脱税だ」と攻勢を強める。税制上問題はないのか。
 国税庁によると、個人が受け取った政治資金は「雑所得」に当たり、最大55%の所得税・住民税が課される。岸田文雄首相は1月29日、衆院予算委の集中審議で「雑所得の収入として取り扱われ、そして収入額からの必要経費を控除した後、残額がない場合には、課税関係は生じない」と説明した。
 雑所得は不動産の売却益やサラリーマンの副業収入など他の所得に当たらない所得を指す。政治資金パーティーは利益率が約9割に達することもあり、必要経費は、場代や人件費、飲食料品などに限られ、課税所得が残らなければ開催する意味がない。
 本来は、雑所得を得るための必要経費を差し引いた残額に課税される。しかし、鈴木俊一財務相は昨年12月の参院予算委で「政治活動のために支出した費用の総額を差し引いた残額が課税の対象となる」と答弁。通常の必要経費に加えて、他の政治活動に使った費用を差し引くことができ、政治資金の特別扱いを認めたことになる
 東京地検特捜部が立件したのは、還流分を政治資金収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反(虚偽記載)だった。報告書に記載されるのは、政治団体間の政治資金のやりとり。複数の税法の専門家は、今回の還流分は「政治資金ではない」とし、議員個人が修正申告する必要があると指摘する。
 政治団体間の寄付は現行法上、法人税が非課税となり、報告書を修正すれば「おとがめなし」となる。自民党安倍派の事務総長経験者ら幹部7人は修正申告し、1月26日に不起訴となった。岸田派も約2500万円の不記載があったが、立件されたのは元会計責任者のみ。不記載のあった派閥は相次いで報告書を訂正。岸田首相は岸田派から「事務的なミスの積み重ねが原因」と報告を受けたと自身の責任を棚上げにした。
 「収支報告書の訂正で、自民党の政治家が脱税しようとしている」。立憲民主党の小西洋之参院議員は1月29日の予算委で、岸田首相にこう詰め寄った。岸田首相は、報告書不記載の責任が会計責任者のみに問われないよう 「連座制の導入」に触れた。公明党が提案する政策活動費の使途公開の義務化も必要だ。
 税金が原資の政治資金は、国民が納得できるようにさらなる透明化が求められている。

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<タックスワンポイント>

確定申告での雑損控除のポイント  「原状回復」って具体的にどんなこと?

 自然災害により被害を受けた人は、確定申告の際に「雑損控除」を適用することで損害分を所得から差し引くことができる。雑損控除は、自然災害で住宅や家財に損害を受けた時に、本人または生計を一にする親族を対象として、「損害額から保険金や損害賠償金を差し引いた金額-所得の10分の1」か「損害額のうち、被災後の取り壊しや土砂除去などにかかった費用-5万円」のうち、多いほうの金額を差し引けるものだ。
 控除の対象となる金額は、地震で壊れた家財や、水害で流出してしまった現金というような直接的な被害だけではない。壊れてしまった家屋の再建費、泥の除去費用、ガレージの修繕など、災害に遭う前の状態に戻すための費用も幅広く含まれている。雑損控除の適用を受けるためには、確定申告書に被害額などを記載し、併せて災害のための支出を証明する領収書などを添付すればよい。
 注意点として、壊れた家をせっかく修理するのだからと元の状態より良いものにアップグレードしてしまうと、その部分については雑損控除の対象とはならないことだ。国税庁のQ&Aでは、「被害を受けた住宅等について行う原状回復のための修繕費用は雑損控除の対象となります」とする一方で、「被災直前よりその資産の価値を高め、その耐久性を増すための支出と認められる部分については、雑損控除の対象となる損失の金額には含まれません」と答えている。
 これは会社の税務申告でもたびたび判断に悩む、修繕費と資本的支出の話と本質は同じだ。ただし会社の場合、資本的支出とみなされた部分についても長年にわたって損金算入していくことが可能だが、個人は事業者でない限り減価償却の仕組みはないため、何の税制上の措置も受けられない。今後生活していくために必要ならいいが、「どうせ雑損控除で税金が戻ってくるだろう」などと思いこんで高価なリフォーム工事を実行してしまうといらぬ出費になる可能性がある。
 なお結果的に資産価値を高める工事をしたとしても、そのなかに原状回復部分が含まれていることもあるだろう。このように原状回復部分と資産価値を高める部分の区分が難しい時には、その工事費用の総額のうち3割を原状回復、7割を資産価値を高める部分として申告することが認められている。

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