<タックスニュース>

「外貨建て保険」販売過熱  元本割れリスクに警鐘も

海外金利の上昇にともない円安が定着しつつある中、銀行窓口での「外貨建て保険」の販売が過熱している。保険機能と外貨での資産運用の両面をもつ一方、元本割れのリスクも相対的に高く、金融庁も警戒を強めつつある。
 外貨建て保険は顧客が支払った保険料を米ドルやユーロなどの外貨にしたうえで、欧米の債券などで運用する保険商品のことだ。通常の円建ての生命保険と同様、死亡時や病気により障害が残ったときなどに保険金が支払われる。
 2022年春以降に欧米の中央銀行でインフレ抑制のための金利の引き上げが進んだ一方、日本では日銀がいまだに金利を低く抑えたままだ。その結果、日本の円よりも金利の高い外貨で資産を運用した方が、利益が大きくなる傾向がある。実際、保険会社が顧客に約束する利回りは、円建て保険では1%程度だが、外貨建て保険の中では4%台の商品も珍しくない。超低金利下で本業の貸出で稼ぎづらい状況が続く銀行にとって、通常より高い手数料が得られる外貨建て保険は「渡りに船」の存在だ。金融庁によると、銀行窓口での販売額は22年度上期で1.2兆円と21年度下期の1.7倍に急増した。
 一方でリスクもある。保険の契約時から大きく円高に振れた場合、円で受け取れる保険金が減ってしまい、払い込んだ保険料を下回る元本割れに陥る。また、金利の動向によっては途中解約時の払戻金が減ってしまう契約もある。ある金融庁幹部は「退職金などを元本にした投資初心者の高齢者らは注意が必要」と語る。
 実際、販売窓口などには毎年1000件以上の苦情が寄せられている。銀行界では昨年、「仕組み債」と呼ばれる高リスク商品の不適切な販売で、千葉銀などが行政処分を受けたばかりだ。顧客への丁寧な説明よりも自社のノルマを優先する文化を見過ごせば、大きな不祥事にもつながりかねない。

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<タックスワンポイント>

補助金受給時に圧縮記帳で課税を回避  一時的な繰り延べは将来を見据えて利用

補助金や火災保険金などを受けて固定資産を購入した際に、その購入価額から補助金の額を控除して購入価額とすることを「圧縮記帳」という。これにより補助金の益金の額が圧縮損の損金の額と相殺され、補助金分の課税負担が低くなる。
 補助金であっても税金を課すのが原則ではあるが、補助金は益金の額に算入されても、購入した固定資産は損金の額に計上されない。「収益増えて費用ゼロ」となれば、益金の額はほぼ法人税課税の対象となり補助金の効果が低下してしまう。そこで「圧縮記帳」という特例を設け、補助金への課税を一時的に回避して繰り延べることで、企業としてはきちんと補助金を設備投資に生かすことができるわけだ。
 ただし補助金ならば何でも圧縮記帳の対象になるわけではない。法人税法では圧縮記帳の対象となる補助金は国や自治体からのもので、受け取る法人は当該事業年度の固定資産取得などに使ったことなどの条件を限定している。また一般的に補助金というと「金銭」をイメージするが、金銭の代わりに固定資産そのものが国などから給付された場合も圧縮記帳の対象となる。
 なお圧縮記帳は課税を繰り延べるための会計処理であり、その年度の税負担を軽減する効果を持つものの、次年度以降に送っているに過ぎず、免税制度ではない点はよく覚えておきたい。つまり翌年以降は圧縮記帳分だけ課税が重くなるということだ。
 この繰り延べが表面化するのは、翌期以後の減価償却費計上時と資産の除却・売却時だろう。圧縮記帳をするということは、すなわち固定資産の取得価額を小さくすることを意味する。取得価額が減額されれば、その分減価償却額は小さくなり、将来の売却益や除却益は大きくなる。これらはすべて法人税などの増加に反映される。圧縮記帳は一時の節税にはなるものの、将来の節税を犠牲にするという側面を持つことに留意したい。さらに圧縮記帳は事務や経理の処理が複雑で面倒であることも踏まえ、補助金を受け取ったときは圧縮記帳を利用するか、慎重に検討したほうがよい。

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