<タックスニュース>

首相秘書官に財務省出身者  コロナ後の増税への布陣着々

政府が1月1日付けで発令した人事が注目を集めている。新たに菅義偉首相の政務秘書官に就いた財務省出身の寺岡光博氏(54)だ。2015年から3年間、当時官房長官だった菅氏の秘書官を務めた。経済産業省の出身者が首相周辺を固めて「経産省内閣」とも呼ばれた第2次安倍晋三前政権時代に存在感が低下した財務省。復権への足がかりとなるか。
政務秘書官は、法的には各省が派遣する事務秘書官と同列の職制だが、慣例的に「首席秘書官」として一段格上に位置づけられている。第2次安倍内閣の発足当初に経産省資源エネルギー庁次長を辞職して異例の転身を果たした今井尚哉氏が有名で、後に首相補佐官も兼務してアベノミクスを主導。17年4月に予定されていた消費税率の10%への引き上げ延期につなげるなど、異能を発揮した。
通常は国会議員秘書を長く務めた人物が就くケースが多く、菅氏も首相就任に伴って自身の事務所秘書の新田章文氏を登用した。今回、政権発足から3カ月余りで政務秘書官が交代するのは異例だ。秋口以降の新型コロナウイルス感染状況の急激な悪化に加えて内閣支持率の急落もあり、省庁間の政策統括機能を強化する必要があると判断した模様だ。
「菅さんは歴代首相の中でも特に気心知れた側近を重用するタイプ」(官邸幹部)。現在6人いる事務秘書官のうち5人は官房長官時代の秘書官をそのまま起用した。その1人は寺岡氏の後任で菅官房長官秘書官を務めた財務省出身の大沢元一氏。ちなみに寺岡氏の前任の官房長官秘書官は、現在財務省で予算編成の全権を握っている矢野康治主計局長だ。
寺岡氏は「いざというとき相手が誰であろうと直言できる人物」(財務省幹部)と評される。財務省にとっては官房長官時代の菅氏に秘書官として仕えた3人全員を政権の枢要なポストに収めた形となる。新型コロナ対応では巨額の財政出動を迫られており、「収束後には将来の増税に向けた下地をつくれる布陣。それがようやく整った」(同)とも言われる。寺岡氏をはじめとする「トリオ」の手腕が今後、問われそうだ。

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<タックスワンポイント>

従業員の高額退職金に待った!  勤続5年以下だと所得税の負担増

退職金はリタイア後の生活を保障するという性質上、「退職所得」として、さまざまな収入のなかでも税金面で優遇されている。例えば、通常の給料である給与所得は、給与所得控除を差し引いた残り全額に所得税がかかるが、退職金だと、退職所得控除を差し引いた後の額の2分の1にしか所得税はかからない。例外として、役員については勤続5年以内に退職すると2分の1課税が適用されないが、従業員については、これまで勤続年数による区分はなかった。
そこで近年、雇用の流動化が日本でも進むなかで、優秀な人材をヘッドハンティングする際に、この仕組みを利用した節税策が生まれた。それは、特定のプロジェクトに必要な人材を短期雇用する際に、給与を大きく下げる一方で、高額な退職金を払うというやり方だ。この手法を使えばトータルで会社が支払う額は変わらなくても、税金面で有利な退職所得のウェートを大きくすることで、受け取る側に課される所得税の額は劇的に減ることになる。
しかし、この節税テクニックを国は「意図的な税負担減らし」とみなし、2021年度税制改正で退職所得の「2分の1課税」ルールを見直す方針だ。これまでは従業員の勤続年数にかかわらず、退職所得控除を差し引いた残額の2分の1が所得税の課税対象となっていたが、22年分の所得税からは、「退職所得控除を差し引いた残額のうち300万円を超える部分」については、勤続年数が5年以下だと全額に所得税がかかるようになる。短い勤続年数に見合わない高い退職金は、所得税の額が一気に増えるということだ。なお300万円以下の部分は、従来どおり2分の1課税だ。勤続年数が5年を超えていれば、これも全額が2分の1課税となる。あくまで短期間雇用の高給取りサラリーマンを狙い撃った増税といえよう。なお前述したように、役員については従来から勤続5年以下であれば2分の1課税ルールの対象外となっている。
退職所得控除は、勤続年数が20年以下なら「40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)」、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となっている。これまで退職金の税金を考える時は「勤続20年以下かどうか」が一つの分かれ目だったが、今後は「5年超かどうか」も考える必要が出てきたといえるだろう。

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