<タックスニュース>

節税保険の規制強化  国税庁が改正通達を発遣

中小企業経営者の節税手法として活用されてきた一部の生命保険について、国税庁は6月25日、名義変更時の評価方法を見直す改正通達を発遣した。それに先立つ18日には、見直し案に対するパブリックコメントの結果と回答も公表している。今後は低解約型の定期保険について、低額での経営者個人への譲渡ができなくなる。規制の対象となるのは、19年7月8日以後に加入した契約の、今年7月1日以降に行われる名義変更となる。
今回の通達で見直されたのは、加入当初は保険料が割高な上に解約返戻金も極端に低く抑えられているが、一定のタイミングで返戻金が急増するように設定されている保険商品の評価ルールだ。保険の譲渡額は、譲渡時の解約返戻金相当額で評価されるため、法人で加入して割高な保険料を会社で負担し、返戻金が急増する直前に名義を経営者個人に変えると、経営者は低い返戻金相当の金額で保険契約を手に入れ、その後、急増した高額の返戻金を受け取れるという仕組みになっていた。
改正通達では同種の保険について、個人が会社から保険を譲渡される時の評価額の計算方法を変更し、解約返戻金が法人の資産計上している保険料の7割に満たなければ従来の解約返戻金としてではなく資産計上額で評価するとのルールを提示した。それまで支払ってきた保険料と返戻金に著しいかい離が生じているときには、返戻金相当額での譲渡を認めないことになる。
先立って発表されたパブコメ結果では、当局は「今回の見直しの対象は、法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける保険契約等に関する権利としていますが、法人税基本通達の他の取扱いにより保険料の一部を前払保険料に計上する『解約返戻率の低い定期保険等』及び『養老保険』などについては、保険商品の設計などを調査したうえで、見直しの要否を検討することとしています」と答え、今後のさらなる規制強化にも含みを持たせている。

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<タックスワンポイント>

おしどり贈与で逆に税金が高くなる!?  相続に比べて割高になることも

結婚して20年以上の夫婦が行う住宅や住宅資金の贈与は、贈与税の年間控除枠の110万円に加え、別枠で2千万円までを課税対象から除外することができる。この特例は、オスとメスが常に一緒に過ごすという「おしどり」の名前を使って、おしどり贈与とも呼ばれる。長期にわたって一緒にいるからといって必ずしも仲睦まじい夫婦だとは限らないが、夫婦間で贈与をするのなら、税負担が減るおしどり特例を使わない手はないだろう。
ただし制度を利用することで、かえって支出が増えることもある。住宅の贈与の際には、不動産取得税や登録免許税、専門家への報酬など、合計すると何十万円もの支払いが生じるからだ。
例えば住宅の贈与を受けた人は名義変更の際に土地や住宅の固定資産税評価額の3%分の「不動産取得税」を支払わなければならないが、おしどり贈与を使わずに相続で住宅を受け取るケースだと、不動産取得税がかからない。
さらに所有権の移転登記にかかる「登録免許税」でも、贈与で住宅を受け取れば不動産の価格の2%だが、相続なら0.4%に税率が下がる。いずれも相続より贈与で受け渡した方が高くつくということだ。
税金以外にも、贈与の際に税務申告や登記手続きの代理を税理士や司法書士に依頼し、その後に相続が発生した際にも再び専門家に依頼するとなると、贈与をせずに相続時だけに手続きの代理を依頼した人と比べて支払う報酬総額が割高になりやすい。
そもそもおしどり贈与の目的は、生前に無税で贈与することで将来の相続税の負担を減らすことにあるが、夫婦間の相続では配偶者控除により1億6千万円までの相続財産には相続税が課税されないことになっているため、生前贈与をしなくても相続税がゼロとなる可能性は十分あり得る。おしどり贈与を使って本当に税金や報酬を合わせた支出を節約することができるのか、しっかりシミュレーションしてから利用を考えたい。
ちなみにおしどり贈与は、同じ相手につき一度しか使えない。利用した後に離婚して別の相手と再婚をすれば適用が可能だが、さらに20年の月日が必要となるのは言うまでもない。

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