<タックスニュース>

全国銀行協会が発表  私的整理の新ガイドライン

全国銀行協会は、経営が困難になった中小企業の債務を協議によって整理する私的整理の新たなガイドライン(指針)を発表した。収益性や将来性を見込める事業を手がけているにも関わらず、過剰な債務のために経営が行き詰まる場合に、債務返済を延長したり、一部減免に応じたりして立て直しを後押しする。4月15日から適用する。
コロナ禍が長期化し、事業環境が好転しない状況下で債務負担が重い事業者が増加することを背景に、国が昨年の成長戦略実行計画で策定することを盛り込んでいた。全銀協の有識者による研究会が具体的な指針を検討していた。01年に大企業向けに作成していた指針の中小企業版にあたる。
指針では、平時と、有事にわけた対応を記載。平時には事業者が財務基盤強化や経営の透明性を確保することとし、金融機関には事業者の経営課題を把握・分析し、予兆管理することなどを記載した。
一方の有事は、過剰債務などによる財務内容の悪化や資金繰りの悪化などが生じ、経営に支障が生じる場合とし、有事に早期の経営改善を目指すこととした。第三者の弁護士や公認会計士の専門家が中立な立場から再生計画策定などを支援する。支援開始の段階で詳細な事業再生計画などは求めないこととした。
大企業向けの指針では3年としていた債務超過の解消年数を5年と長く設定した。また、大企業向けの指針では、金融機関が支援に応じる代わりに経営者の退陣を求めてきた。しかし中小の事業者では、感染症の流行などにも配慮し、経営者の退陣を必須とはしないこととした。

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<タックスワンポイント>

一般社団法人の相続対策はもう使えない?  信頼できる他人を見つけられれば…

2008年の制度改革で誕生した一般社団法人(一社)は、資本金が不要で登記のみで設立可能という手軽さが売りとなっている。一社は株式会社と異なり、持分がない。そのため剰余金の分配や解散時の残余財産の分配は基本的には行われず、また株式会社が持分割合に基づいて法人を所有するのに対し、一社は誰も法人を所有していない。
この「誰のものでもない」という点を生かしたのが、一社を利用した相続税対策だ。株式会社であれば、株主や出資者に相続が生じれば、持分に応じて会社の資産や負債が相続税の対象になる。しかし一社には持分がないので、どれだけ出資していても、法人の保有する資産や負債は出資者の所有物ではなく、相続税の対象にならない。中小オーナー企業の社長一族の相続では自社株式が主たる財産となるため、これをオーナー個人から一社に移すことによって相続税を大きく節税できるというわけだ。ただしこの節税策は、2018年度税制改正で規制が行われている。同改正では、相続開始直前時点で、総理事数に占める同族役員数が2分の1を超えている法人、相続開始前5年のうち3年以上で、総理事数に占める同族役員数が2分の1を超えている法人については、法人に譲渡された財産にも相続税や贈与税を課すとされた。以前も法人が実質的に同族に支配されていると認められた時には相続税が課されるといった規定はあったが、判断基準があいまいで実際には野放しとなっていたため、要件が明確化されることとなった。
同族を理事の半数以下に抑えれば節税策は変わらず使えるが、その場合は新たなリスクが発生する。株式会社とは異なり一社には持分がないため、持分に応じた議決権というものも存在しない。そうなると法人としての意思決定は単純に、理事の頭数による多数決となる。つまり同族役員が半数以下に制限されるということは、外部の人間に意思決定権を委ねることと同義なのだ。目先の税負担を抑えるために一社を設立したが、将来的に法人ごと財産を奪われる展開もあり得なくはない。
さらに「同族役員」は、決して血縁上の親族だけにとどまらず、被相続人と特殊な関係にある者として「被相続人が会社役員となっている会社の従業員等」も含まれる。ごくごく親族に近いような身内を理事に据えて要件をクリアするという抜け道は使えないわけだ。親しい知人や友人に意を含めて理事になってもらうことはできるが、将来的に心変わりしないという保証はない。最後はどこまで他人を信用できるかという覚悟の問題になるのかもしれない。

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