<タックスニュース>

民法の改正相続法  大きく変わる評価額

 民法の改正相続法の施行日を2019年7月とする政令が11月21日に公布された。「配偶者居住権」に限っては20年4月施行となる。民法の改正に伴い、居住権の相続税評価額の算定法など税法の整備が必要で、来年度以降の税制改正に反映される見通しとなっている。
 相続制度の大幅な見直しは1980年以来約40年ぶり。従来の相続制度を大きく変える内容が多数盛り込まれ、特に配偶者の権利を拡大するものとなっている。
 配偶者に関する大きな変更はふたつで、ひとつは結婚して20年以上の夫婦間で生前贈与もしくは遺贈をした自宅を相続の際の遺産分割の対象から除外する特例の創設だ。現行法では原則として、生前贈与もしくは遺贈された住居は遺産分割の対象となっている。来年7月以降は、長年連れ添った配偶者であれば、自宅を得た上で、残された相続財産から法定相続分を取得できることになる。
 また、2020年4月以降に開始する相続では、配偶者が所有権を相続しなくても自宅に住み続けられる「配偶者居住権」が導入される。現行法では、配偶者が取得した自宅の評価額が高額だと、それだけで法定相続分の大半を占めてしまい、預貯金などの他の相続財産を十分に取得できず、老後の生活資金に不安が残るおそれがある。改正後は家の価値を「所有権」と「居住権」に切り離し、配偶者は居住権だけを得れば家に住み続けられることとなった。
 この居住権を相続した場合、税額計算の際にはその評価額を算出する必要があるが、具体的な評価方法は明らかになっていない。法案段階でまとめられた資料によると、配偶者が若いほど居住推定年数が長くなるため、評価額は高額になる見通しだ。今後、他の相続財産の評価法を定めた「財産評価基本通達」に評価方法が明記されると見られている。
 改正法では、介護などで貢献した親族の金銭要求制度も導入される。長男の嫁など法定相続人でない人でも遺産分割の際に一定の金銭を「特別寄与料」として要求できるようになる。また、相続した預貯金の仮払い制度もスタートする。現行では相続が発生すると被相続人の預金口座は凍結され、原則的に遺産分割協議が終わるまで引き出せないため、当面の生活費や葬式費用を確保できないことがある。改正後は金融機関ごとに150万円を上限に引き出せることとなった。
 なお、相続法改正の施行日を定める政令の交付と同日の21日、「遺言書保管法」の施行日を2020年7月10日とする政令も公布された。この制度は法務局が自筆証書遺言の原本を保管し、相続後に遺族の請求を受けて写しを交付するもの。自宅での保管と異なり、紛失や親族による改ざん・隠匿の心配はなくなる。また保管制度を利用すると、遺言書の加除訂正の状態などの内容を家庭裁判所に確認させる手続き(検認)が不要になる。


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<タックスワンポイント>

不安尽きぬ増税対策のカード決済  ギフトカードで利ザヤが抜ける?

 安倍晋三首相は、来年10月の増税に伴う景気後退を防ぐ対策として、数カ月間限定でクレジットカードなどのキャッシュレス決済に5%還元の特典を付ける方針だ。元からカードに付いている還元ポイントとは別に5%分を国がバックするというもので、経理処理の煩雑さを避けるために、軽減税率対象かどうかは関係なく全ての物品・サービスに適用するという。つまり軽減税率が適用される飲食料品などは実質的にかかる消費税が3%になる、何とも不思議な特例措置だ。
 細かい制度設計は今後進められていくだろうが、もし全商品やサービスに対するキャッシュレス決済が等しく5%還元されるという現行案がそのまま採用されると、ふらちな蓄財術が横行する恐れもある。例えばデパートのギフトカードや商品券は、税法で消費税がかからないことが定められているため、これにも5%還元が適用されるとなれば、実質的には価格の5%割引で買えてしまうことになる。さらにギフトカードのなかには、チケットショップなどに持っていくとほぼ正価で買い取ってもらえるものもある。では仮に1万円のギフトカードをクレジットカードで買って、それをチケットショップで9800円で売れたとすると、キャッシュバック分を考慮すると約300円の”利ザヤ”が発生することにはならないか。それを限度額いっぱいまで繰り返したら…?
 これはあくまで仮定で、実際にはそうした不正はできないよう制度設計がされるだろう。しかし制度は複雑になればなるほど「抜け」や「漏れ」が生まれるのが世の習いだ。キャッシュレス化を進めたいという政治的思惑主導で簡素な税制をねじ曲げた結果、善良な納税者が損をする世の中にならないことを願う。


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