Vol.0504
<タックスニュース>
国税の滞納残高 19年連続で減少
国税庁が、1年間の活動やその年のトピックについてまとめたレポートの最新版を発表した。滞納されたままとなっている国税の「残高」は、ピークだった1998年の2兆8149億円から19年連続で減少し、2017年度には8531億円となっていることが分かった。
国税の滞納額は14年度までゆるやかな減少傾向にあったが、15年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたタイミングで3割増加した。しかしそれに合わせるように、未納分の徴収などの処理を終えた「整理済額」も伸び、未整理額は18年連続の減少を達成している。
滞納整理で差し押さえられた財産を売却するインターネット公売は、18年度に6回実施された。高級車や宝飾品、不動産などが約800物件売却され約4億円を徴収したという。レポートは「ネット公売は利便性が高く、より多くの参加者を募ることができるため、差し押さえた財産の高価・有利な売却に役立っています」と成果を誇った。
レポートでは適正・公平な課税徴収の課題として、国際的な取引への対応を挙げている。各国の税制の違いなどを利用した税逃れを防止するため、国外送金等調書や国外財産調書の提出など様々な施策を実施しているが、近年になって顕著な伸びを見せているのが、租税条約に基づく各国との情報交換制度だ。15年度までは情報交換件数は約300件で推移していたが、自動的にCRS(共通報告基準)に基づく情報交換を始めた16年度に738件へ一気に倍増すると、最新の17年度でもさらに増えて831件の交換が実施された。CRSについては、18年10月時点で100を超える国や地域が参加していて、今後ますます情報交換制度を活用した所得の捕捉が進むとみられる。
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<タックスワンポイント>
税率は相続税より高いはずなのに… どうして生前贈与はトクなのか?
相続税対策には生前贈与が有効とよく言われる。しかし、仮に1千万円の財産を子どもに引き継ぐとして、控除などを抜きにするなら相続税の税率は10%だが、それに対して同じ額の生前贈与にかかる税率は30%だ。シンプルに税率だけを考えると相続で渡すほうが得のはずだが、なぜ生前贈与が相続対策に有効と言われるのだろうか。
具体的な例を挙げて検証してみよう。例えば父親が亡くなって5億円の財産が残されたとする。法定相続人が子2人だけで、差し引けるのが「3千万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除だけだとすれば、2人が納めるべき相続税は計1億5210万円という計算になる。
しかし仮に、父親が息子たちに1千万円を生前贈与していたとする。子への1千万円の贈与にかかる税率は30%で、基礎控除などを差し引いて税額は177万円だ。その一方で、1千万円減った遺産4億9千万円にかかる相続税額は1億4760万円と、なんと贈与前より450万円の節税になるのだ。新たに発生した贈与税の負担を差し引いても、1千万円を生前贈与したことで273万円の節税ができたわけだ。
この謎を解くヒントは、相続税は亡くなった人の財産の総額に対して課されるという点にある。つまり同じ1千万円でも、課税対象となる財産の総額が1千万円であればそのまま相続税は10%だが、例に挙げたような5億円の財産を持つ人の1千万円にかかる相続税率は、実質的に45%に達している。その分が減るのだから、税率30%の生前贈与を行っても結果的に得をするというわけだ。
さらに、生前贈与には様々な非課税ルールが設けられていることも大きい。そもそも毎年110万円までの贈与には税金がかからないし、1500万円までの一括贈与が非課税になる教育資金の贈与特例などもある。こうした優遇を活用することで、相続税対策としての生前贈与はますます効果を発揮するだろう。
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