<タックスニュース>

政府税調 給付付き税額控除の論点洗い出し 「所得の完全把握が大きな課題」

 政府税制調査会(首相の諮問機関、会長=安住淳財務相)は5月28日、有識者で構成する専門家委員会(委員長・神野直彦東京大名誉教授)を1年半ぶりに再開した。政府が低所得者対策として導入を進めている給付付き税額控除の論点の洗い出しを行うなど、増税に向けた低所得者対策の議論がようやく動き出すことになった。
 給付付き税額控除は、税金還付と現金給付を組み合わせた制度で、15年10月の税率10%への引き上げ時に導入される予定だ。同制度では、所得を正確に把握する必要があることから、同時にマイナンバー制を導入させるために本格導入は番号制が定着する2017年ごろになる見通し。
 論点の一つになるのが、所得把握の難しさだ。日本は源泉徴収が基本のため、番号制度ができても2カ所から給料をもらったり、金融資産を持っていたりする人の所得を完全に把握することは難しい。委員会でも「多くの人に申告納税に切り替えてもらう必要がある」との意見が出た。
 一方、低所得者対策は、生活保護など社会保障政策で実施されており、「あえて給付付き税額控除を実施する必要はないのでは」などと給付付き税額控除制度の不要論も出た。野党が低所得者対策として導入を求める声が上がっている食料品など生活必需品の税率を下げる軽減税率は「(諮問で)両制度を対比することにはなっていないので、(専門委で)大きく取り上げることはない」(神野委員長)と述べた。

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<タックスワンポイント>

山林の相続税で納税猶予 税制改正で創設された特例

 山林を相続等で譲り受けた後継者が林業経営を続けられなくなるケースは多い。相続税額が林業での収益に見合ったものではなく、過大な負担になってしまうためだ。経営規模を縮小せざるを得ない人や、林業経営を廃止してしまう人も出ている。こうした状況を解消するため、平成24年度税制改正では山林を譲り受けた際の相続税について、一定の条件が整えば納税が猶予される特例が創設された。24年4月1日以後に相続または遺贈で取得した山林に掛かる相続税に適用される。
 まず、山林を持っている人は「山林経営の規模の拡大の目標」「目標を達成するために必要な作業路網(森林内にある公道、林道、作業道などのこと)の整備」などについてまとめた「森林経営計画」の認定を受けたうえ、計画に従って山林経営を続ける。また、所有する山林を取得することが見込まれる推定相続人(後継者)について農林水産大臣の確認を受ける。その山林保有者が死亡した後も、後継者は引き続き森林経営計画に従って山林経営を行う。このような条件を満たせば、その後継者が納付すべき相続税のうち、山林の価額の80%に対応する相続税が猶予される。
 ただ、これはあくまでも猶予であり、場合によっては猶予期限が到来することもある。例えば、森林経営計画の認定が取り消されたり継続して認定を受けられなかったりした場合、区域内で伐採、造林、作業路網の整備のいずれも行わない年があった場合、山林経営を廃止した場合、山林所得に掛かる収入金額がゼロになる年分があった場合――などだ。
 これらのケースでは、猶予されている相続税の全部または一部、そして利子税を併せて納付しなければならない。一方で、後継者が山林経営を続けたまま死亡した場合、死亡時に納税猶予されている相続税の全部の納付が免除される。


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