Vol.0273
<タックスニュース>
早期決着望む財務省は不満? 消費増税の判断時期
12月が濃厚来年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて、安倍晋三首相がいつ最終判断するかに注目が集まっている。甘利明経済再生担当相は7月23日の東京都内の講演で、12月1日に発表される7~9月期の法人企業統計を見た上で首相は結論を出すとの見通しを表明。一方、財務省や自民党税制調査会は年末の予算編成作業もにらんで早期の判断を求めたい考えで、神経戦が続きそうだ。
甘利氏は講演で、再増税を見送る可能性については「ゼロではないが、経済が順調に回復して予定通りに消費税が上げられるのがベストだ」と述べ、増税に向けた環境整備に努める考えを強調。11月17日に7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が発表された後、昨年消費税率8%への引き上げを判断した時と同様、有識者による集中点検会合を開き、幅広く意見を募る考えを示した。政府内には首相が11月にも表明するとの見方があったが、12月に入ってからの決着が濃厚になりつつある。
菅義偉官房長官も25日の記者会見で「消費税を引き上げるかどうかの判断を極めて慎重に行いたいというのは、安倍首相が日頃から申し上げていることだ」として、増税の判断時期は「12月頃」と歩調を合わせた。
一方、予算編成や税制改正の実務を担う財務省や自民党税制調査会は、早期の判断を求めている。自民党税調幹部は「11月17日(GDP速報値発表)でも遅いぐらいだ」と指摘。消費増税による財源確保を前提とした子育て支援や、税率10%への引き上げ時に新制度を検討するとしている地方税の偏在是正措置など、消費増税と連動する懸案が多いためだ。
政府内からは「増税判断が遅れ、予算編成が越年するような事態になれば景気への影響が大きい」との声も漏れるが、菅氏は同じ記者会見で「(予算編成が)越年することは全く考えていない」と強調した。
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<タックスワンポイント>
積極的な設備投資の負担抑制 即時償却が可能な制度
企業の設備投資には多額の費用が掛かってしまう。できるだけ負担を抑えるために該当する税制上の特例を漏れなく確認したいところだ。中小企業でよく使われるのは少額投資の特例だが、注目度が高まっているのが「生産性向上設備投資促進税制」である。
生産性向上設備投資促進税制は、設備投資に関して「即時償却」できるのが大きな特徴となっている。この即時償却と、5%の税額控除とで有利な額になる方を選ぶことができる。
対象設備は生産性を向上させる一定の機械装置や器具部品、建物、ソフトウェアなどで、「先端設備」または「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」に該当するもの。先端設備は最新モデルであること、同じメーカーの一世代前のモデルから生産性が年あたり1%以上向上していることが要件となる。一方、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備は、一定の計算式で算出した「投資利益率」が15%(中小企業者は5%)以上となることが見込まれるものとして経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された設備であることが必要になる。
税制措置が”手厚い”とされる点に加え、青色申告の法人・個人事業主であれば誰でも利用できること、業種や業態、企業規模による制限がないことなど対象者の範囲が広い点、対象設備の範囲が広い点も売りとなっている。
即時償却または税額控除5%(建物・構築物は3%)が選べるのは28年3月31日まで。同年4月1日から29年3月31日までは、特別償却50%(建物・構築物は25%)または税額控除4%(建物・構築物は2%)の選択制へと縮小される。経済産業省が7月にこの税制のQ&Aを公表しているので確認しておきたい。
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