<タックスニュース>

軽減税率制度で自公の対立鮮明に  山口公明代表「財務省案受け入れられない」

 消費税10%時の負担軽減策として財務省から軽減税率制度の代わりに提案された還付金制度に対し、公明党が反対姿勢を鮮明に打ち出した。同党上層部には当初、還付金制度案を前向きに評価する向きもあったが、党内の強い反発を受け、反対へ舵を切った。軽減税率に慎重な自民党は還付金制度案を軸に負担軽減策を検討する構えで、自公の対立が強まりつつある。
 「財務省の考え方をそのまま受け入れるわけにはいかない」。公明党の山口那津男代表は9月20日、東大阪市での街頭演説でついに還付金制度案の受け入れを拒否する考えを明言した。
 還付金制度案は消費税10%時に酒類を除く飲食料品を購入する際に支払った消費税の一部がのちに申請に基づき還付される仕組み。軽減税率制度の導入を検討してきた与党税制協議会が財源、対象品目の線引き、経理事務負担の三つの課題で行き詰まり、財務省が代替案として編み出したものだ。公明党の斉藤鉄夫税調会長は当初「難しい連立方程式の解だ」として前向きに評価していたが、党内に「選挙で公約した軽減税率制度とは言えない」との批判が広がり、受け入れ拒否に傾いていった。
 この案の作成に関わったのは財務省主税局幹部と自民党の野田毅税調会長、公明党の北側一雄副代表のみ。公明党は税調トップの斉藤氏すら蚊帳の外に置かれた。党税調の重鎮が税制の決定権を握る伝統的な税制改正プロセスに則った形だが、安倍政権では党税調にかつての強力な主導権がないのが実情。主税局は公明党を中心に噴出した異論の抑え込みに失敗し、自公の対立を招いた。
 自民党は還付金制度案について、修正には応じてもあくまで同案を軸に検討していく構えを崩していない。公明党との隔たりは大きく、同党に歩み寄りを求める方針だ。しかし、公明党は昨年衆院選などで繰り返し軽減税率の導入を公約してきた経緯があり、軽減税率が実現しなければ「党内が持たない」(公明党幹部)との見方が支配的だ。軽減税率をめぐる自公の対立が激化すれば来年夏の参院選の選挙協力に影響する可能性も現実味を帯びそうだ。


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<タックスワンポイント>

支払金額とかい離したインボイス記載  重加算税は課税されるのか?

 課税庁が決定した更正処分に不満があるときは、納税者は異議申し立てなどを経たのち、国税不服審判所にその課税判断が正しいかどうかを審査請求することができる。2014年10月、ある業者に下された重加算税の処分をめぐって、審判所が裁決を下した。
 貨物輸出者から送付されたインボイス(発送する荷物の内容を説明する書類)に記載された貨物の価格が本来の価格と比べて著しく低かったことで、インボイスを基に申告をしたエスカレーター部品輸入事業者のA社は、結果的に消費税を過少申告することになった。これに対して国税当局は、A社が「事実の隠ぺい」をしたとして消費税の更正処分と重加算税の賦課決定処分を行った。
 国税当局の判断は、正しい価格が記されていないインボイスとは別に現実の支払い額が記されている価格明細表があったにもかかわらず、貨物の輸入申告手続きを依頼した通関業者にそれを渡さなかったことが隠ぺいにあたるというものだ。重加算税は、納税者が国税の課税標準や税額の計算の基礎になる事実の全部または一部を隠ぺい・仮装して納税申告書を提出したときに課税される(国税通則法6条)。A社の事例は事実の隠ぺいの有無が争点となった。
 最終的に審判所はA社の主張を支持した。その理由としては、A社の認識は、通関に必要な書類はインボイスを含む4種類だけで、価格明細表の提出が求められていることは知らなかったことが挙げられている。さらに、A社は調査担当者に対して、インボイスだけではなく課税価格表も提示していた。事実の隠ぺいがあったとは認められず、国税当局は処分を取り消すべきであると判断した。

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