<タックスニュース>

デジタル課税の国際合意  目標を10月に延期

デジタル課税を巡る国際ルールについて、経済協力開発機構(OECD)は大筋合意の目標時期を7月から10月に延期した。新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、税収が落ち込んで財政が悪化した新興国が独自で課税する仕組みを次々に導入し始めており、国際協調が大前提だった取り組みが形骸化する恐れが出てきている。
国際ルールの見直しは約140の国・地域が参加し、OECDを中心に協議が進んできた。中核になっている20カ国・地域(G20)は2月、グローバル企業からの税収の一部を国ごとの売上高に応じて配分する原案を承認。これを受け、OECDは税収を市場国に配分する「デジタル課税」に加え、各国に共通する「最低税率」を導入する計画を打ち出した。世界の税収を1000億ドルも底上げするという試算を打ち出して訴求力を高めつつ、7月の全体会合で大枠を固め、2020年内に最終合意するというスケジュールを描いた。
しかし新型コロナの感染が拡大して外出が制限されたのを機に、通信販売や動画、会議システムなど世界展開するオンラインサービスの利用者が急増すると、新興国は前のめりで課税を強化。インドは4月、国内に拠点がない電子商取引(EC)企業に対し、国内売上額の2%課税を開始。インドネシアも、国外のデジタル企業が国内でビジネスを展開する場合の課税を強化する方針を決めた。
一方、欧州の民間企業による諮問委員会や米国の経済団体は、事業活動が制限されて対応が難しいため、新型コロナの感染拡大が収まるまでルールの見直しを延期すべきだとする見解を表明。OECDも応じて全体会合の日程を10月に延ばしたが、日本の経済産業省幹部は「新興国の抜け駆けが横行し続ければルールは意味がなくなる」と危機感を隠せないでいる。

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<タックスワンポイント>

コロナ禍で生命保険はどうなる?  想定外の災害時の保険支払いルール

新型コロナウイルスによる死者は、いまや全世界で30万人を超えようとしている。国内でも政府による外出自粛要請などによって経済に甚大な影響が出ていて、まさに2011年の東日本大震災以来の”天災”といえる。
経営者のなかには、がんや心臓病などへの備えとして生命保険に加入している人は多いだろうが、まさか新型コロナのような感染症を想定していた人は少ないだろう。保険会社にとってもそれは同じはずで、今回のような世界規模の感染症は保険料にも織り込んでいなかったはずだ。では、新型コロナによる死亡にも、ちゃんと保険金は支払われるのだろうか。
想定外の大災害に対して、保険金が支払われないというケースは過去に確かに存在した。1995年の阪神大震災では、「地震や火山噴火を原因とする損害については保険金を支払わない」とする災害免責条項を理由に保険会社が火災保険の支払いを拒み、被災者が裁判を起こしたものの敗訴した例がある。
しかし被災者救済に資するべきだとの社会的要請もあり、保険業界の姿勢はその後変わりつつある。東日本大震災では、保険会社各社は災害免責要項を適用せず、例外として保険金の支払いに応じる姿勢を打ち出した。
今回の新型コロナウイルスでも、日本生命、第一生命、明治安田生命、大同生命など保険各社はすでに、死亡保険金を支払うことに加え、不慮の事故での死亡時に保険金が上乗せされる「災害割増特約」の対象にも含めることを発表している。約款には新型ウイルスに関する規定はないが、特例として適用することを決めた。日本生命では別の特約も含め、約260万件が新型ウイルスの特例の対象になるという。またかんぽ生命では、終身保険などで2倍の保険金を支払う規定を、新型コロナウイルスにも適用することを発表している。
なお感染の疑いがあるとして検査のために入院した時にも、検査結果が陽性であるかどうかにかかわらず、入院給付金の対象ともなるようだ。
世界規模の感染症の流行リスクがこうして顕在化したことで、今後はさらに医療保険や死亡保険へのニーズが高まることが予想される。ライフネット生命は、今年4月の新規契約件数が前年同月比で198%に伸びたことを発表している。

税理士法人早川・平会計