Vol.0579
<タックスニュース>
国際連帯税を超党派が議員立法へ 根強い航空業界の抵抗
政府に対して「国際連帯税」を創設するよう訴える圧力が強まっている。超党派の国会議員連盟が今秋にも、2023年度中の導入を促す議員立法をまとめ、国会に提出する方針だ。ただ新型コロナウイルスの感染拡大に収束する兆しがないなかで、未曽有の苦境に陥っている航空業界などの抵抗は根強く、実現までのハードルは依然として高い。
国際連帯税は航空機の利用や金融資産の売買など、経済に関連する取引が国境を越えた際に課税する仕組みの総称で、税収は発展途上国向けに貧困や感染症の対策費に回す。国連が00年にミレニアム開発目標を採択したのをきっかけに、先進国を中心に導入の動きが出てきた。海外では、フランスや韓国などが国際線の利用客の運賃に上乗せする航空券連帯税を創設。フランスは金融取引税も設けている。
外務省は10年度から税制改正時の要望に国際連帯税の導入を盛り込み続けてきたが、21年度はあえて取り下げた。外務省幹部は「対象になりそうな業界には新型コロナ禍で甚大な打撃を被った企業が多く、与党の税制調査会の反発も例年以上に強かった」と振り返る。
こうした状況を踏まえ、「国際連帯税の創設を求める議員連盟」は3月9日、新興国のワクチン確保や富裕層と低所得者の格差是正など、新型コロナの感染拡大により世界で生じている課題に対応するという位置づけで導入するよう、政府に要求することで一致した。菅義偉政権では、河野太郎行政改革担当相が外相在任時から国際連帯税の創設に前向きな発言を繰り返しており「理解が一気に広がる気配は十分ある」(議連のメンバー)。衛藤征士郎会長は会合で「日本が国際的な議論を喚起すべきだ」と語気を強めた。
しかし現状では、激減した飛行機の利用者が元に戻る可能性はゼロと言っていい。ある航空会社幹部は「建前がいくら立派でも、負担を増やす議論は時期尚早だ」と反発している。
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<タックスワンポイント>
長期金利が税に与える様々な影響 フラット35は2年前の水準に上昇
長期固定型の住宅ローン「フラット35」の金利が今年3月、2年3カ月ぶりの高水準に引き上げられた。住宅ローン金利を決める要因となる、10年物の国債などに適用される長期金利が一時的に急上昇したためで、さらにその背景には米国のバイデン政権が協議する2兆ドル規模の財政出動が影響している。この金利の上昇傾向が一時的なものか今後も続くのかは未知数だが、少なくともこれまでの数年間、歴史的な〝超低金利時代〟が続いてきた流れに変化が生じたのは確かだ。
長引く低金利環境は、日本経済や個人の資産形成に様々な影響を及ぼし、もちろん税の世界も無関係ではない。例えば、会社が役員や従業員に金銭を貸し付けた時には、法令で定められた利息を取らなければ差額分が給与として課税されてしまう。法令で定める利息とは、会社が銀行などから借り入れて又貸しした時には融資にかかる利率が適用され、そうでなければ「認定利息」と呼ばれる数字を使う。
認定利息は国税庁が毎年発表するが、その下敷きとなっているのは銀行の貸出金利で、さらに基をたどれば長期金利の値動きがベースだ。長期金利の値動きが認定利息に与える影響は顕著で、黒田総裁のもと〝異次元の金融緩和〟が始まる13年までに貸し付けたものにかかる利率は4.3%だったのが、翌14年からは1.9%まで一気に下がった。日銀のマイナス金利政策が始まった16年には1.8%だった認定利息は、その後もじりじりと下がり続け、現在は1.6%となっている。
他にも長期金利に影響される税の利率としては、延滞税や利子税に用いられる「特例基準割合」も存在する。こちらも金融緩和政策によって13年を境目に大きく変動し、それ以前は4%台で小幅に推移していたものが、14年以降は1%台後半まで下がっている。最新の改正ではさらに下がり、今年の特例基準割合は1.0%だ。このように長期金利の変動は、税の世界にも大きく関わっている。
借金や延滞税、利子税に付く利息であれば「低ければ低いほどありがたい」と考えそうになるが、特例基準割合は何らかの理由で税務署などからお金が戻ってくる時の還付加算金の利息計算にも使われる。つまり利率が低ければ損だけでなく得も小さくなるというわけだ。
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