Vol.0677
<タックスニュース>
相続した“負動産”どう処分? 国庫帰属制度いよいよスタート
相続したものの不要な土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」が4月27日にスタートした。各地の法務局で申請を行い、審査をクリアすれば、一定の負担金を納めることで所有権を手放せるものだ。来年には相続土地の登記が義務化され、違反者には罰則があることから、使う当てがなく売り手もつかない土地の処分方法として新制度の利用を検討するケースも増えそうだ。
全国で増加する所有者不明土地の原因は、相続時に登記をしないまま放置される土地が多い。そのため国は来年から相続時の不動産登記を完全義務化する。正当な理由なく登記を怠れば10万円以下の過料が科されることとなる。対象は過去の相続も含むすべての土地となっていることから、これまで管理が面倒だったり固定資産税負担を納めたくなかったりという理由で放置していた土地も登記せざるを得なくなるだろう。そうした売り手もつかないような“負動産”オーナーの選択肢として、国が新たに用意したのが「国庫帰属制度」だ。
ただ、利用価値の低い土地を引き取るだけあって、国が制度の利用に一定のハードルを課しているなど、注意すべき点は多い。
例えば申請に当たっては、土地が“クリーン”であるかが問われる。建物がある、担保権や使用収益権が設定されている、他人の利用が予定されている、土壌汚染されている、境界が明らかでない、所有権の存否や範囲について争いがあるなどの事情がある土地は、却下事由に該当し、そもそも審査を受け付けてもらえない。
審査を受けられるとなれば、承認申請書、土地の位置および範囲を明らかにする図面、申請者の印鑑証明書などの必要書類を用意して法務局で手続きを行う。1件当たりの審査手数料は1筆当たり1万4千円だ。仮に審査で不承認となり帰属制度が利用できなかったとしても、審査手数料は返還されない。
審査では、国による管理にコストがかかり過ぎないかがチェックされる。ポイントは、一定以上の勾配・高さの崖がないか、管理・処分を阻害する有体物が地上にないか、管理・処分のために除去しなければならない有体物が地下にないか、隣接する土地の所有者等との争訟がないかなどだ。例えば崖であれば「勾配が30度以上かつ高さ5メートル以上は不適格」など詳細な条件も設定されている。
こうした条件をクリアして審査を通過すれば、晴れて不要な土地を国に引き渡すことができるが、その際には10年分の管理費に当たる負担金を納めなければならない。金額は原則20万円だが、市街地や農用地区にある宅地、田畑、森林などは金額が上がり、面積によっては100万円を超える負担金が発生することもあるので注意が必要だ。
制度のスタートを受けて、法務省は各地の法務局で相談窓口を設けている。窓口では、相談者が記入したチェックシートや持参した土地の状況が分かる資料などを基に、土地を国に引き渡せそうか、申請書類に漏れがないかなどのアドバイスを受けられるという。
同制度は価値の低い土地を持つオーナーにとって有力な選択肢の一つとなり得るが、利用に際してのハードルは決して低くはない。申請に当たっての諸々の事務負担やコストを検討した上で、制度を利用するかを判断したいところだ。
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<タックスワンポイント>
自宅を離れたリモート勤務に税の優遇 別荘とは異なる住宅としての利点
コロナ禍を経てリモート勤務がそれなりに普及したが、家では子どもがいるなどの理由でなかなか仕事に集中しづらいことも多い。そこで時間貸しのワーキングスペースを利用したり、なかには職場に近いマンションを購入したりして、自宅以外でリモート勤務をするという人もいるようだ。
こうした「セカンドハウス」は自宅以外に持つ2つ目の居住空間という意味では「別荘」に近いが、別荘とは異なり税制上の様々な優遇を受けられる点が特徴となっている。税法では厳密に「セカンドハウス」という規定はないが、施行令などでは一般に「週末に居住するため郊外等に取得するもの、または遠距離通勤者が平日に居住するために職場の近郊に取得するもので、毎月1日以上居住の用に供するもの」かつ、「別荘」でないものと位置付けている。そして「別荘」は、「毎月1日以上居住の用に供するもの以外で、専ら保養のためのもの」と規定されているので、つまりセカンドハウスとは、夏休みやお正月などの一定期間だけ滞在するのでなく、日常的に使用する自宅以外の居住空間ということになる。
このセカンドハウスは、メインとなる自宅と同様に、不動産取得税を軽減できる特例の対象だ。具体的には、床面積50平方メートル以上240平方メートル以下の要件を満たしていれば、税額計算の基礎となる固定資産税評価額を最大1200万円差し引くことができる。同様の軽減措置は敷地に対してもあり、土地の価格や床面積に応じて税負担を軽減することが可能だ。
注意しなくてはならないのは、この軽減特例は原則として、セカンドハウスの取得者が自治体に適用申請をしなければ利用できないという点だ。実際には多くの場合、取得者が申告しなくても、登記をするために法務局に提出した書類などによって自治体が減額特例の適用をしてくれることが多い。しかし確実とはいえないので、自治体から不動産取得税についてのお知らせや納税通知書が送付されてきた時点で税額をしっかりチェックし、適用漏れがあるなら問い合わせをしたほうがよいだろう。
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